「(あのジョリーロジャーは…)」
島の裏手にきて、風にはためく海賊旗を木陰に隠れながら見上げる
ジョリーロジャーの形には見覚えがあった。
確か2000万の賞金首"悪虐"のホアドが率いる、ルーフ海賊団のもの。
「…(彼らが何故この海に…グランドラインの海賊だったはずなのに…)」
落ち延びてきたのだろうか。
でも問題はそこじゃない。
「(…何もせず大人しく帰ってくれそうにはないべか…それに2000万…)」
私にどうにかするにはやっぱり難しい海賊さんだ。
そんなこと言ってられないけど。
とりあえずあの人たちの目的を知らないと。
船にもう少し近づいて、海岸におりてきた海賊たちの話に耳を済ませた。
「よぉし…野郎ども、今日の俺達はついてるぜ…!!なんせこの豊かな島をこれから俺達のもんにできるんだからなあ!!」
「おおー!!」
「金だけじゃなく、酒も女も俺達のもんだ!!」
「刃向かう奴は殺しちまえ!!」
……話し合いでは帰ってくれませんね…
略奪する気しかないらしいことがすぐにわかる言葉を吐きながら、町の方角に進んでいく海賊さんたち。
とりあえず、せめて島全体より皆の命を護ろう。
港の船から皆を逃がすことが先決だなと、森の中の避難場所に向けて、静かに走った。
***
「皆!無事ですか?」
「!アヤ…!!」
街から離れた避難場所の隠された洞窟の中には、何故か女性と子供、それからご老人しかいなかった。
「?ダフや、おじさま達はどこに…?」
「男たちはみんな…街を護りに…」
「っ!?」
おばさまの言葉に凍りつく。
街には海賊が向かっている。
身体の芯が冷えて、手先が震える。
「アヤ姉…?大丈夫…?」
「!…っ大丈夫…男性たちのことはわかりました。私がなんとかします…」
震えを鎮めるため、息を吸い込んで私より少し背が高いアンナを見上げる。
「アンナ、先にここの皆を連れて港の船から島を出てください…ここにいては見つかった時に袋のネズミです」
「っでも…じゃあこの島は…?」
「…海軍をよびましたから大丈夫。それまでは私が島を護ります」
怖がるアンナを安心させたくて、小さな嘘をついた。
支部にはいまだ連絡がつかないのに。
でも、安心したように息を吐いてわかったと頷いてくれたから、いまはそれでよかったのかもしれない。
「それじゃあ頼みましたよ、アンナ」
「うん…アヤ姉…任せて!」
アンナの返事を聞いてから踵を返し、鞄の中に押し込んでいた真っ白な海軍コートを羽織り
アフリクシオンのセーフティバーを外した。
「(あなただけが頼りなんです、アフリクシオン)」
歯車が軋んだ
(お願いだから、間に合って)
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