彩豊かな花びらが風に舞う、ロマナ島の港は俺が思っていたよりも人で賑やかだった。

田舎だというから、失礼でしかねェ話だが寂れているのかと思ってた。しかしそんなことは全くなかった。


「(ここがアヤの故郷か…海軍とは全くかけ離れてんな…)」


賑やかで、穏やかで、暖かな島なんだろう。

アヤの性格がああなったのにも頷ける。

一人で船のへりからそんな港を見下ろしていると、荷物を部下たちが船から下ろすより早く

アヤが船のステップを軽やかに駆け下り、その姿見て笑顔になる島民たちの中にとびこんだのが見えた。


「おかえりだべさ、アヤ!」

「よっ!おかえり出世したなあ!」

「まあまあ、綺麗になって…!!」

「みなさん…!もう、出迎えなんてえがっだのに…」


島民に囲まれた中で照れ臭げにしていたが、見たことのねェくらい自然な笑顔をしていた。

苦労をしてきたことは大将からなんとなく聞いていたが、それでも、愛されてもいたらしい。

年相応の幸せそうな横顔に、少し安堵し、不覚にも見惚れた。


「……」

「アヤ部長、今日一段とかわいいっすね。ねー?先輩」

「…バカ野郎。あれがあの人の本来なんだよ」

「いだっ!」


にやにやとして声をかけてきた後輩の頭を殴ってから、船を降りて人にもみくちゃにされるアヤに近づいた。


「アヤ部長」

「あ、スモーカーさん…」

「荷物を宿屋に預けさせたら、我々はこの島近くの西の海の支部にて本部への帰港日まで待機していますので、何かあれば連絡を」

「…スモーカーさん、支部に行く前に数日くらいこの島にいては?」

「!しかし…」

「ここまで来てくださったんですから…折角ですからこの島の良さを知って帰ってください」


だめですか?

眉をハの字に下げて見てくる姿に言葉が詰まった。

すると周りの島民たちも、やんややんやと騒ぎだした。


「海兵さんらも残って行くべよ!」

「いまこの島は花祭り中だしなあ!少しくらい羽目外してけって!」

「いや、職務が…」

「…スモーカーさん、」


ぐいぐいと島民に引っ張られる中、アヤがにっこりと笑った。

ああ、この笑顔はまずいな。


「三日間停泊して、私の故郷を楽しむこと。これは上官命令です」


…元気を取り戻してきたこいつに、かなうわけがなかった。



愛おしい土地に招待を

(とりあえず青雉大将に予定変更の連絡をしたが、案の定デートだなんだのうるさかった)
(一ヶ月の間に大将たちが来かねない気がして、笑えねェ)


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