「あ〜…アヤ…」
「うるさい黙れ仕事をしろ」
「アヤがいないから無理、できない」
「いないんじゃけェ仕方ないじゃろう…!!」
アヤが姿を消して三日。
各海の支部には、消えたその日のうちに見つけ次第捕獲せよと連絡をつけたが、どこからも音沙汰がない。
「…大声出さないでよね…イライラしてるからって」
「…イライラなどしとらん…貴様がうるさいからじゃ」
クザンの口からアヤのことがでるたびに心が荒む。
こっちは今すぐにでも探しだし連れ戻したい気分じゃというのに。
肩書きがそれを許さない。
「……何故…あいつは家出など…ようやく…」
ようやく、わしの手元にきてくれたというのに。
逃がすつもりはないとはいえ、やすやすと手放す羽目になろうとは
ぎりっと唇を噛みしめると、紅茶を淹れてきたボルサリーノがわらった。
「まあ遅かれ早かれ、どっちにしろアヤちゃんは一度は逃げると思ってたけどねェ〜…」
「…わかっていたなら、何故対策をせんかった…!」
「ん〜…どこに行こうが、ここがあの子にとって絶対的な帰る場所になるために必要かなァと思ったからかねェ〜」
どさっとソファに腰掛け、なんでもないように言われた言葉に瞠目した。
「アヤちゃんはいい子で健気でェ〜…しかも家庭的で癒されるしィ〜…腹立たしいけどォ〜…わっしらと違って沢山の人から愛される子だよねェ〜…?」
「まあ、それは全面肯定するけど…」
「だから多分、他の島でもアヤちゃんは楽しく暮らしていけると思うよォ〜…でもねェ〜…あの子にとって帰れる場所ってのは今、海軍しかねェと思うんだよねェ〜」
大切な肉親を置き去りにしてでも、独りきり大切な肉親のために海軍に入った。
だから肉親の元にも帰れない。
今自分と懇意でいてくれるのは海軍や政府だけ。
「だからそんなに心配しねェでもォ…あの子はそうそうここを捨てられねェさァ〜…」
気長に連絡を待とうじゃねェのォ〜…と、にっこりと笑ったボルサリーノに
大分アヤに狂っとるなと、マグマだというのに寒気がした。
するとクザンがだらけた姿勢のまま、ボルサリーノに問いかけた。
「…もし帰ってこなかったらどうすんの?」
「そりゃあその時はァ〜…仕方ないから無理矢理連れ戻して再教育しなきゃだよねェ〜…」
上もアヤちゃんが海軍から逃げちゃったら、アヤちゃんに危害を加えかねないし、その前にねェ。
間延びしたゆるいはずの言葉が、ますます部屋の中に燻る狂気を強くしている気がした。
心中お察し
(まあ、本当に逃げちゃったことに関してはイラついてるよ)
(だって好きな子に逃げられたら、ショックだよォそれは)
(でも、狂ってることに関しては二人もわっしのこと言えないよねェ?)