『アヤの母親…ショウガン・ハナを消すことになった』
『!?何故…!』
『五老星たちの判断だ…どうにもアヤに関する不安要素は消しておきたいらしい…』
『っ…!』
『…それで、そのショウガン・ハナなんだが…お前は顔を見たことがあるか?』
『…ありませんが…』
『なら、資料をすぐ送る…お前は多分知っておいた方がいい』
数時間前に、総帥とあのやりとりをした時から確信にも似た予感はあった。
外れればいいと柄にもなく祈ったが、こういう予感はよく当たるらしい。
手元の資料を握りしめた。
十数年前にこの海から姿を消したこの女の顔を
魔女を母と呼び慕い、そのそばに常に付き従っていた姿を
忘れたことはなかった。
「…ガードレッド・ハナンナ…!!」
写真越しの雰囲気は、自分が知るより随分やわらかなものになっていたが
潮風にたなびく長い赤茶の髪と
丸みを帯びたオレンジの瞳
気の強さを表すような凛とした顔立ちは
なに一つ変わっていなかった。
名前とともに変わっていてくれたら、どれほど今、自分は救われたか。
「ッ…(まさかとは思ってはいたが…)」
アヤを見た時から似ている、とは思っていた。
だが、本当にそうだとは思っていなかった。
…いや、俺はそう思いたくなかったのかもしれん。
「(…ハナンナ…お前の言う通りだったな)」
『貴方に私は護れない』
否定したかったあのお前の捨て台詞は、最期まで真実だ。
「俺に、お前は護れなかった」
せめて安らかに、ジュリエット
(すまないと言ったなら、お前は許さないと言うんだろうな)