第零話 寒空のおもひで





「お米ちゃんお茶ー!」

「はぁい、ただいまお持ちしまーす」


かぶき町の一角にある、『望月屋』という団子屋


そこが私の家で、仕事場


今日も私はいつもとなんら変わらない街と、人を見て働く


そして、最近できた優しい恋人と休日を過ごす


そんな日々に今はとても満足しています


でも、刺激が欲しかった時もありました


何か変わったことがないかしら、とありふれた日常の中に非凡を探してしまう


――あの初雪の日も、今より心幼い私はそんな風に非日常を求めていました



「よォ、お米。今日も景気いいな」


「あら、銀さんいらっしゃいませ」



でもそれは、この白いふわふわ天然パーマの人



「今日もお団子ひとつですか?」


「いや・・・今日は団子ふたつで頼まァ。土産でな」


「!――・・・ようやっと、会えたんですね・・・よかった・・・!」


「・・・だからよ、とびきり美味いの頼むぜ」


「はい、もちろんです!」



照れくさそうに笑うこの人に出会い、初恋というものを知った日から


私のそんな心は、大きく変わったのです





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