「(困ったことになったなあ…)」


右を見ても左を見ても、出口が皆目検討つかない。

私は今、城内のどこにいるんだろうか。

まさか案内の人たちからちょっと目を離した隙に見失ってしまうとは思わなかった。

一通りの調査を終えて、すでに黙認されていることばかりだったので全て私の憶測違いだったと結論付け、ここを出るつもりだったのに。

何故最後の最後でポカをおかすのか。


「(…クザンさんを、城内で迷子になったから迎えに来て、なんて間抜けな子供みたいな理由で呼んだら迷惑だし…)」


困り果てながら廊下を歩いていると、日差しのあたっている場所があるのが見えた。

外の光に出口だろうかと淡い期待を寄せて小走りで向かった。


***


「…お庭…?」


たどり着いた先に望んでいた出口はなく、そこはドフラミンゴさんからは想像できない可愛らしい花畑のある中庭のような場所だった。


「(ドフラミンゴさん、こんな趣味あったの…?)」

「…誰…?」

「!」


足を踏み入れようとしたとき聞こえた、小さな声にはっとしてその方向を見れば、緑の髪の女の子。

整った綺麗な顔を見て、こういう子を美少女と呼ぶんだろうな、と関係ないことを思わず考えた。

するとその美少女の、光のない丸い金色の瞳が私を見つめてくる。


「お姉さん…そのコート…」

「え、あ、はい、えっと…私は海軍の人間なので…」

「…まったくそうは見えないですね…」

「うぐっ…よく言われます…」


自分でもわかっているとはいえ、ストレートにそう言われてしまうと傷つく。


「…まぁ合う合わないは別にしてもなんの仕事をするかは人それぞれですからいいと思いますよ…」


そう言って不思議な少女は私の横を通りすぎ花の中を進んでいく

そして慣れたようにその中に座り花を摘む。

ますます、ドンキホーテファミリーには不釣り合いに見えた。

というか、こんな子がいるなど情報にはなかったはず。


「あの、貴女は一体…」

「…何故海軍のお姉さんがここにいるかわかりませんが…死にたくなければ私のことは深く追及せず、早くここから出ていったほうがいいかと…」

「いや出て行きたいんですが迷子で……って、死?」


唐突に飛び出した物騒な言葉に目を丸くする。

一体どういうことなのか。


「…ええ…だから…」

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

「?…なんでしょうか…?」

「ここにいたら死ぬなんて…まるで貴女と会ったことが問題なような……貴女は…一体何者なんですか?」


摘んだ花で、静かに花冠を作る目の前の少女は、ここにいるべきではないと思った。


貴女はだあれ?

(貴女はここに、存在しうるはずのない女の子)



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