「……」
「……」
カリカリとペンの走る音と時計の針がすすむ音だけが部屋に響く。
空気が重い。呼吸がしにくくて息が詰まる。
かといって出て行ったり、やることがないからとちょこちょこ動いたら殺られそうな雰囲気。
「…(赤犬さんは、噂通り雰囲気から怖い感じなんだべな…)」
怖い顔の人が多くて、とっつきにくい海兵さんの中でも群を抜いて親しみにくい。
そう思いながら、仕事をしている赤犬さんをちらちらと見ていると
赤犬さんが手を止めて、鋭い視線を寄越してきた。
「…暇なんか?」
「えっ、いや、その…はい…」
「…暇なんじゃったらここにきて、書類仕事の仕方でも見ていかんか」
お前もいずれやることじゃけぇ。
そう言って私の首根っこをつかみ、自分の膝にのせるとまた赤犬さんは仕事を始めた。
「(う、うわああ赤犬さんの膝の上とか…怖い…!!)」
一気に赤犬さんと距離が近づいたのもあり、ますますの怖さと緊張感を持つことになって体が固まったが
せっかく真面目に仕事を見せてくれようとしてくれる貴重な人だと思い、書類の書き方を見る。
「(…怖いけど、悪い人じゃねぇんかな…?)」
真面目で堅いところが余計怖さを増幅させてるだけで…あ、これフォローになってねぇべか?
でも、うん、悪い人ではないと思うべ。
すると
「…アヤ、」
「?はい!」
「…絶対的正義の名に恥じない海兵になるんじゃぞ」
「わ、わかりました赤犬さん!」
赤犬さんの言葉に、首だけ振り返り、敬礼をして答えると、わしゃっと雑に頭に手をおかれた。
徹底的な正義
(部長、赤犬さんは厳しくて怖いですね)
(まあ正常な反応だ)
(でも…悪い人ではないと思います)
(…やはり、ワシのことは覚えておらんようじゃな…じゃけんど、その方が都合はええか…)
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