「…アヤ、」

「ん…」


膝に座らせられて、久しぶりのキスをする。

私の頬を包む大きな手があったかくて、優しくてとろけてしまいそう。

やっぱり、あまり会うことができない歳上の恋人のこの人は、私にとって心の支えで、なによりもの精神的な癒しだ。


「はぁ…ヴェルゴさん…会いたかったです…」

「ああ、俺もだアヤ」

「えへへ…」


嬉しくて笑みをこぼしながら、たくましい胸板に顔を埋めればすごく安心した。

すると頭の上から低い声で名前を呼ばれ、目線をあげる。


「アヤ…噂に聞いたが、一人でなにか調べているらしいな?」

「!…」

「…本当ならやめておけ…いいことは起きない」


お前が心配なんだ。

そう言って額にキスを落とされたが、心配してくれる嬉しさと同時に少しの不服さも感じた。


「止めるんですね、ヴェルゴさんも」

「お前になにかある方が俺には問題なんだ」

「…私は大丈夫ですよ」


多分、と苦笑を返せば、なにか言いたげな渋い顔をされた。

その顔に少しだけ微笑んで、そっとヴェルゴさんの頬に触れる。


「ヴェルゴさん…私は今、私の中の正義の名前を探してるんです」

「…」

「私はまだまだ皆さんよりも幼いけど…やっぱり海軍を支える一人になったからには、私なりに志したい正義があるんです」

「それが…今やっていることだと?」

「…ええ、私はここで動かなかったらきっと後悔しますし、自分のことが嫌いになると思います」


それは絶対に嫌なんです。


「だから、何も言わないで見守ってください。私は胸を張って、貴方に好きと言ってもらえる私でいたいんです」


そう自分の唇に人差し指をあてて、控えめにウインクをしてみせれば、抱きしめてくるヴェルゴさんの腕の力が強くなった。


「…アヤ、お前は思っていたより頑固なんだな」

「頑固な私は嫌いですか?」

「いや、全て含めて愛してるさ…(だから困る)」

「ふふ…よかった」


安心して目を細めれば、サングラス越しの真剣な目とかち合う。


「だがアヤ…無茶はよしてくれ」

「…今日は随分、心配性ですね?」

「…お前のことを、この先も大切にしていきたいから言うんだ」


未来まで約束してくれるような言葉に、頬が熱くなる。


「…わかったな?アヤ」

「…ヴェルゴさんにそこまで言われたら…無茶したくても、できませんね…」


照れくさいままに笑いかえせば、唇が再び重ねられた。



甘んじてしまえば

(壊れてほしくはない。壊されてもほしくはない)
(だから今に、俺にずっと甘んじていてくれと言うのに)
(聞いてはくれないんだな、海兵のお前は)



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