ドレスローザの隣島の島民皆殺し事件。
一人、勝手に調べ出した霧の向こうにおいやられたこの事件の真実を調べ出して、もう長い。
なかなか繋がらなかったピースを繋ぎ合わせるには、生まれた疑惑を確信にするしかなかった。
「…ど、ドフラミンゴさん」
定例会議の後、廊下の先をゆく桃色の羽のコートを着た王下七武海の一人に意を決して声をかける。
「んん?なんだよ、アヤ?」
「……あの…、今回の現状報告の件なんですが……本当に、これだけですか…?」
馬鹿にするように見下ろしてくる人に、七武海の会合の報告内容をまとめた書類の束をふる。
「…どう言う意味だ?」
「あ、いえ、その…なんとなく、なんですが…今日は、何か、煙にまこうとしている気がして…」
「…(やっぱり鼻が利きやがんな…)」
「ち、違うならいいんですが…一応、ただしい情報を私は入れるように言われているので…確認をしただけですから…」
そう小声になりながら書類を抱えなおし、床に視線を落とせば、ドフラミンゴさんは独特の笑い声をあげた。
「フッフッフッ、俺は隠し事なんてしてねぇさ、情報伝達部長さんよ。鼻が利きすぎて嗅ぎ間違えちまったんじゃねーか?」
「…そう、ですか…なら申し訳ありません…」
「かまわねぇさ、間違いはある…特にまだ関係が浅い内はな…そうだろう?ん?」
「は、はい、そうですね…以後気をつけます…」
確かめようがなければ仕方ない。
不都合ならば全て流されるだけだろう。
証拠がいる。何かあるという絶対的に動かない証拠が。
「…それじゃあ俺は行かせてもらうぜ」
「…ドレスローザ隣島の島民が皆殺しにされた件、ご存知ですよね?」
「……ああ、むごい事件だったらしいな。調査はあんたがしたと聞いたが、それがなんだ?」
「…実は、海賊にやられたようなのですが…近海のドレスローザの国王の貴方に心当たりは?」
貴方も王とはいえ、海賊なのですから。なにかわかりませんか?
ゆっくりと刺激するように問えば、一瞬だけドフラミンゴさんが表情をなくしたような気がした。
それを見て、なにかしっていると確信を得たが同時に恐ろしくて足が震えた。
しかしすぐにドフラミンゴさんの顔にはいつものいやらしい笑みが戻った。
「俺にはなにも関わりのねェ話だ。ただ近隣てだけで疑惑をかけられちゃ世話ねぇな」
「…そうでしたか。ならすみません…近々ドレスローザの監査に参りますので、それまでに気になることは解消しておこうかと思っただけですから」
絶対に踏み込ませる気がない何かを隠している。
だが確証がなければ七武海相手においそれと口を出せない。
仕方ないと内心唇を噛み締め、ドフラミンゴさんの言葉を素直に受け止めたように頭を下げた。
「フッフッフ…それだけならいいんだがな」
「…それだけですよ。では、また」
大丈夫、収穫がなかったわけではない。
そう思い、ふらふらと去りゆく背中に言及できず、書類を握りしめることしかできなかった。
深追いを許して
(あとのことは、次のドレスローザの監査で見つけ出してみせる)
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