「…一人だけ損傷がひどく何者か確認できませんでしたが、とりあえず過去のリストにあった他の方たちはこれで人数分です…」


心苦しさと涙耐え、全ての集められた遺体を確認する。


「やはり全滅か…」

「……赤犬さん、せめて弔いをしていっても?」

「…お前さんがそうしたいならそうせぇ」

「…はい。みなさん、お墓をつくるのを手伝ってくださいませんか?」


後ろの部下の方たちに呼びかけをすれば、みなさん優しい人ばかりで協力をしてくれたので、簡素ながらすぐに全員分のお墓を作ることができた。

お墓を見渡してから、跪いて目を閉じ、両手を組んで祈りを捧げる。


「(皆さんを護ることができなくてごめんなさい…)」


頬を熱いものが滑るのを感じながら、心の中で届くのかわからない懺悔を重ねた。


***


「…静か、ですね」

「そうじゃな」


今日はこの島に停泊することになった

生きている命のない空間なんだと吹き抜ける静寂が伝えてくる。

簡素な墓標たちを見つめたまま、後ろの赤犬さんをよぶ。


「……赤犬さん、」

「なんじゃ?」

「…海軍が強く正義をかかげなければならないのは、弱い人を…平和を護るため…そう考えていいんですよね…?」


か弱い人々を護るため、だから私たちは強くなければならないのだと

たくさんの人々のために、世界のために、折れてはいけないくらい強くならなければならないんだと。


「…そう思っていて、いいんですよね?」

「…そうじゃな。弱い者のために悪を滅するんじゃ、ワシらはのぅ…悪がいる限り弱い者に安寧はない」

「……そうですね。(ああ…この人は…)」


やっぱり、あくまで悪を全て滅するために強くなれというんだ。

間違ってるとは思わない。正しいと思う。正し過ぎるほどに。

だけど、この人と私の信念は、きっと永遠に重ならない気がした。

たとえこれから先、何度言われても頷けないだろう。


「……アヤ、お前は甘いんじゃァ…」.

「赤犬さんが厳しすぎるから、多分私は甘すぎるくらいでいいんですよ」

「……」


やんわりと赤犬さんからの強制を抑え込んで振り返り、微笑んだ。

すると、部下の方が走ってくるのが見えた。


「アヤ部長、赤犬大将ご報告が!」


「…なんでしょう?」


どうやら仕事の話らしいと、部下の方に赤犬さんと二人、向き直った。



重ならぬ意思

(どうにも気になる点がありまして…調べたところあの損傷が激しかった男性の遺体のあった家なのですが…)
(なにか不審な点が?)
(いえ…遺体は一つしかなかったんですが、どうにも家を調べたら一人暮らし…というわけではないように私には思えまして)
(…それは気になりますね。少し調べて帰りましょう)


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