「アヤちゃんお菓子とか好きか〜い?」
「す、好きですけど…」
「よかった〜なら沢山食べていいからねぇ〜」
「え、あ、ありがとうございます…」
今日は次期大将候補と名高い中将の黄猿さんという人物を見てみようと来てみれば、何故か片膝に座らせられ、現在進行形でお菓子を勧められることとなった。
お父さんが死んで以来、こんな風に大人の男の人に子供として接されたことはないからちょっと恥ずかしい。
そう思いながら、黄猿さんのくれたお菓子をかじる。
すると
「それにしてもアヤちゃんは面白いねぇ〜」
「へ?」
「来て早々、いきなり上官の移動命令蹴ろうとするもんだからねぇ〜」
「あ、そ、それはあの…私まだ軍に入って一年ですし、記憶力と狙撃の腕が少しいいくらいしか取り柄がねぇですのに…いきなり強豪海賊ばかりいるグランドラインの本部行きなんてどう考えてもおかしいべと…」
「アヤちゃんなまってるよぉー」
「あ、す、すいません。あと、それと私は別に昇進とか興味ないですし…本部にきたかったわけでもないので…」
反論に熱がこもり過ぎたのか出た訛りを指摘され、慌てて直しつつ、意思を伝える。
「まあ、わっしに言われてもねぇ〜情報伝達部は、軍の機関でもあるけど政府の機関でもあるからちょいと特殊だからねぇ…特に部長職は適性のあるもんが選ばれんのよォ〜」
だからアヤちゃんが選ばれたのは政府からの指名でもあるからねぇ、と間延びした調子で頭を撫でられながら言われ、余計プレッシャーになる。
「(私がウエストブルーの支部に入ったのは、ただお母さんの医療費を賄うためだったんだけどな…)」
なにがどう間違って本部で働くなんてことに…
「まあ、こうなっちゃった以上やるしかないんじゃねぇのか〜い?」
わからないことがあれば教えてあげるからねぇ、と笑いかけてくれる黄猿さんに不安は消えないけれどちょっと元気がでる。
「…そうですよね。ありがとうございます…できる限り頑張ります」
「そうそう…アヤちゃんはいい子だねぇ〜。これから仲良くやろうか」
「はい、黄猿さん」
「そこは名前でいいのよぉ〜」
その言葉に頷いて、ちょっとだけ笑い返せばまた頭を撫でてもらえた。
その手から伝わる温もりに、なんとなく、ここで頑張るしかないんだろうなと諦めにも似た気持ちが芽生えた。
どっちつかずの正義
(今日はボルサリーノのとこに行ったのか?)
(はい、優しいおじさんでした…ちょっとなんか食えない感じもありましたが)
(まあ…あいつはへらへらしてるからな)
(…でも、悪い人じゃなさそうでした)
(可哀想な子だなぁ…だからかねぇ〜可愛がってあげたいねぇ)
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