ドレスローザのリク王が乱心し、国民たちから財産を巻き上げ、殺戮を始めた。
その一報がヴェルゴさんから本部の私たち伝達部のもとにとびこんできたのは、夜もまだ深い頃だった。
近隣海域の支部の自分たちが対応しにいった時にはもう騒ぎは収められたあとだったそうだ。
海賊ドンキホーテ・ドフラミンゴさんが率いる、ドンキホーテファミリーによって。
でも私はなんとなくその事件にいまだ納得がいかなかった。
「(…あの温厚で聡明なリク王様が…本当に国民を…?)」
国民からも慕われる、砂漠の国アラバスタのネフェルタリ王家と並ぶ国思いな王家だったはずだ。
なのにいきなり乱心して国民をなんて…そんな兆候は聞き及んでいないし、いきなりすぎて信じがたい。
でも政府の上層部は、国民たちからの声もあり、深く追求せずドフラミンゴさんを新たな王にすげ替えて受理し、王下七武海にドフラミンゴさんを迎えた。
「……(この人を、本当に認めていいんだべか…)」
海賊だから、ではない。この人だから、だ。
疑問は尽きない。
だけどもリク王様になにがあったのかもわからず、現実に国民の方たちがドフラミンゴさんを推している今、反論を提示することはできない。
ため息をついて、眺めていたドフラミンゴさんに関する書類と手配書をファイルにしまった。
そして時計を確認すれば、七武海との会議の時間までもうすぐだ。
「…行かなきゃだべ…」
集まりは悪いでしょうけど、遅れるわけにはいかないとかけていたコートを羽織り、部屋を出た。
***
「…では以上で定例会議を終了します」
進行役の方の言葉に息を吐き出した。
やはり集まりは悪かった。わかってたことではあるがため息が出る。
七武海より私たち海軍側のメンツばかりが多いなんて、意味がないのに。
すると、
「なんだァ?終わっちまったか?」
「!」
間に合うかと思ったのによ、と大きな音をたて扉を開けて入ってきたのは七武海に入ったばかりのドフラミンゴさんだった。
「…ドフラミンゴさん、会議の開始時間は2時間前だったんですが…」
「んん…?…ああ…誰かと思えば、かの有能と評判なショウガン・アヤ殿じゃねェか…フッフッフッ、小さくて見えなかったぜ」
「…」
明らかに私を馬鹿にした態度をとるドフラミンゴさんに少しだけむっとしたが抑える。
そして、派手な姿を見上げた。
「…(この人は一体なにを考えてドレスローザを…)」
「フッフッフッ…なにか言いたげだな、 ショウガン・アヤよォ」
「…いえ、これからよろしくお願いしますドフラミンゴさん」
疑念だけでこの人相手にいきなり問題をおこしては私の首も明日にはなくなるし
海軍全体に迷惑がかかりかねないと口を閉ざして頭を下げた。
だからだろうか、上からの意味ありげな視線と含みのある笑顔には気づかなかった。
言わぬが花
(大人しそうだが要注意な女だな…フッフッフッ…あのヴェルゴを落としただけはありそうだ)
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