「(…本部は数ヶ月ぶりか…)」


勤務地から久方に訪れた本部。

仕事のために来たが、仮初めの姿のためのくだらない仕事などに重要性は感じない。

だから戻れば、いつもただ一人の姿を探す。


「…(どこに…)」

「あ、ヴェルゴさん!おかえりなさーい」

「!アヤ…」


走って抱きついてきた、小柄な身体の恋人をいつものように抱きとめる。


「ただいま…熱烈だな」

「えへへ、久しぶりに本部に帰ると聞いて嬉しくてつい…!」

「そうか…髪が少し伸びたか?それも似合うな」


柔らかな頬を撫で、前より伸びたアヤの赤茶の髪に指を絡める。

頬を赤らめ、くすぐったそうにしながらもはにかんで微笑むアヤに

彼女以外には求めたことも、これから先他の誰にも求めることもないだろう感情が、熱をもつ。


「…いい子にしていたアヤに、土産だ」

「!わあ…綺麗」


膝をついてしゃがんで目線をあわせ、出先で手に入れたオレンジ色の天然石のブレスレットを細い手首にはめてやる。

やはり、アヤには暖色がよく似合う。


「ありがとうございます、ヴェルゴさん…!」

「…休暇の日にでもつけたらいい」


勿論誰からかは内密にな、と言えば

満面の笑みで素直に頷くアヤに、緩みかける口元を引き締める。

他の誰にもばれてはならない。

始まりこそ偶発的な関係だが

『あいつ』からも任務として続けるようにも言われた関係だ。

海軍本部の人間にしられたら、この任務に支障をきたす。

それに何よりも…


「私、これ大切にしますね…ヴェルゴさん大好き…!!」


こんな場所でただ一人、翠の瞳がゆるやかに細めて笑う姿が

酷く愛おしいと始めて思える女を、まだ手放したくはないと思う。

まだ、というよりも本音は、死ぬまで、だろうか。

しかし、それは必要なくなればいつか捨てる日がくるだろう感情。叶うはずもない。

だが、その時まではまだアヤを愛する恋人で、アヤに好かれる紳士的な男でいようか。


「…俺は愛している、アヤ」


真実の愛も嘯ける

(いつまで続けられるかはわからないが)
(できることならいつまでも)


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