「私を貴女様のそばに置いてください!」

「えっと、と、とりあえず立って…」

「却下だよそんなの」

「なぜですか!」


治療をしたあと目を覚ましたトガ・ファナティス神父さんは

私を見るなり目の前で土下座をして、そばに仕えさせてほしいといってきた。

私がびっくりして答えあぐねていると、クザンさんが不機嫌そうに一蹴した。


「お宅さ、一般人でしょ。戦闘ができるわけでもないし、海兵でもないのにアヤの下にはおけないよ」

「っですが私が無理やりとはいえ悪魔の力を得たのは、何も救わぬ古き神を捨て…新たな求道と進行に目覚めるためだと…!!」

「…悪魔の実を食べさせられたからって使いこなせなきゃ意味ないから」

「っ…」

「クザンさん…少し言い方が…」


なにか不機嫌らしく、いつもより冷えた言い方をするクザンさんに苦言を呈すれば

クザンさんは少し息を吐き出して、ごめんと頭を撫でてきた。


「でもさ、同情とか気持ちだけじゃ務まらないんだよ?だからはっきり言わないと」

「…それは…そうですが…」

「…なら、私が一般人じゃなくなればよろしいですか」


ふと吐き出された言葉に、その吐き出した本人であるファナティスさんを見る。

すると彼は決意に満ちたような目をしていた。


「ファナティスさん…?」

「…私も…海軍に入隊します!」

「え…!?」

「どうせ古き神に仕える神父に戻る気もありませんし、海軍で強くなり、彼女に仕えられる地位を獲得します!!」


頑張ります!とキラキラした爽やかな笑顔で言い放ったファナティスさんに、クザンさんと共に思わずあっけにとられた。


「…(なに…この腹立つくらいプラス思考野郎)」

「(すごい…めげないこの人…!)」

「私は強くなりましょう!新たな信心を与えてくれた貴女のために…!!」


ぎゅうっと両手で包むように私の手を握ってきた人になんと言えばいいかとまどいおもわず頷いた。


「う、うぇ…ま、まってます…?」

「!アヤ!勝手に承諾したらダメだよ!?」

「でも、入隊は個人の自由ですから…」

「…そうだけど…(…まあ…入っても早々あがれないか…)」


そしてそのままマリンフォードまで、海軍にすぐに入隊したいというファナティスさんも連れて行くことになったのだった。



華麗なる転身

(ここがマリンフォードの海軍本部ですか…!)
(えと…なんの手助けもできませんが、海兵になるならがんばってくださいね)
(聖母のその言葉だけで私には十分な助けになります!)
(そ、そうですか…)
(必ず強くなり、貴女の導きをあずかれる身になりますから!)
(……(こいつ助けない方がよかったんじゃ))

(こうして神父だったファナティスさんは一般兵として海軍入りを果たすのでした)

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