外が騒がしい。
逃げ遅れた村の方たちの悲鳴が上がるのが聞こえる。
助けたいが、私にはなんの力もない。
信心の心以外は。
「神よ…!」
ただ、神がお救いくださるよう祈るだけしかできないのだ。
神に殉ずる私たちを、海賊という悪魔からお救いくださるように。
神はきっと救ってくださるだろう。哀れな私たちを。
それなのに…
「あんた神父かァ…?」
「!か、海賊…!悪しき者が立ち入るな!!」
神よ、どうして貴方は越えがたい試練ばかりお与えなさるのか。
こんなにも救いを求めて祈っているのに。
***
「っ…」
島に数歩入ってすぐ匂ってきた血と硝煙の香りに顔を歪める。
するとクザンさんが私を抱き上げて髪を梳いてきた。
「臭いね。気分悪くない?」
「私は平気です…それより早く行かないと…」
少し先で煙の上がるのを見て、クザンさんを急かせば、わかったけど離れないでねと頭を撫でられた。
「アヤに傷ができたら、俺おかしくなりそうだからさ」
「?はい…わかりました」
そして下に降ろしてもらい、二人で煙と悲鳴の上がる村に踏み込んだ。
向かった先にあったのは、力なき人々の苦痛と悲痛。
弱いものを笑いながら蹂躙する海賊の人々。
「っ…なんて真似を…」
悲しくて痛くて、無意識のうちに涙が零れた。
「あらら…こりゃひでぇもんだ。アヤ、平気?」
「はい……平気、です…」
村人だろう骸が折り重なっているのを横目にいれながら、歯痒さと吐き気に唇を噛んだ。
「(助けてあげられなくてごめんなさい…)クザンさん、奥に行きましょう…」
「そうだね…海賊も村の奥の方にいってるし」
そして、腰のコートを解き、羽織りながら海兵さんたちを連れて海賊さんたちの暴れている方へ歩き出した。
正義を背負い
(海軍です!今すぐ略奪行為はやめ、おとなしく全員投降してください!)
(海軍!?)
(あー…あんまアヤが目立っちゃだめで…)
(なんだこの垢抜けないチビ女…まじで海軍かよ?)
(今うちの可愛いアヤを馬鹿にした奴氷漬けにしてやるから出てこい)
(ちょっ、クザンさん寒い冷たい!)
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