「クザンさー…あら?」
「あ?」
クザンさんの部屋に次の任務の通達を届けにくれば、探し人はおらず、部屋は珍しく煙たかった。
煙草を吸う人じゃないのに、と不思議に思った時、こちらを振り返った存在に気づいた。
口に咥えた葉巻から、煙の主はこの男の人だと気づいた。
「(腰のは将校のコート…)…まさかアンタが情報伝達部の部長か?」
「あ、はい。部長のショウガン・アヤです」
「(まだガキじゃねぇか…!)」
軽くお辞儀をすれば目の前の人は驚いたように目を見開いていた。
この反応にはわりかし慣れてきたので、苦笑だけを返す。
「…ところで貴方はクザンさんの部下の方でしょうか?」
「あ、ああ…スモーカーといいます」
「スモーカーさんですか。どうぞそんな固くならないでください。私の方が年齢的にはひよっこなんですから」
急に身を固くしたスモーカーさんにゆったりと笑いかけてから、本題に入る。
「それで、スモーカーさん。クザンさんは知りませんか?」
「…大将なら俺がきた時にはもういませんでしたからおそらく…」
「…はあ…」
皆まで言わなくてもわかる。きっとまた逃げたんだろう。
クザンさんのこういうところには困ってしまう。
「…なら貴方も待ちぼうけですか?」
「ええまあ…」
「じゃあ、どうせしばらくはクザンさん戻らないでしょうし、お茶でもしません?」
このまま待つのもと思い、茶器をだしながらスモーカーさんに問いかけた。
「え、なら俺が淹れ…」
「ああ、座っててください。コーヒーでいいですか?」
「…はい…」
「お砂糖とミルクはいかがします?」
「いえ…」
ブラック派の人がまた増えたなあと思いながら、脳内のリストに名前を増やした。
「(…まだガキだが、大将たちより遥かにまともだな)」
煙の中で、こんにちは
(大変ですね、スモーカーさんも)
(アヤの方がきついだろう)
(…あれ、スモーカーじゃない…アヤと二人でなにしてんの?)
(!青雉大将…)
(休憩ですよー)
(…なんか親しげじゃない?タメ口だったし今)
(私がお願いしたんですよ。休憩くらい階級なしで仲良くしてくださいって)
(…そういうことです)
(……アヤ…君って子は…)
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