「…部長、久しぶりだな」

「ああ、ヴェルゴさん。お久しぶりです」


ここ一年で、本部に帰るたび開け慣れてしまったドアをまた今回も開けた。

誰かがこの部屋をこう揶揄していた、子供に与えるドールハウスのような部屋だと。

海軍には不釣り合いな雰囲気と、家具が全体的に小さな作りの執務室が広がる。

そこには相変わらず無邪気で幼いながら、妙に落ち着きのある、海軍での小さな上官のアヤ部長がいた。


「コーヒーで、いいですよね」

「ああ」

「ふふ、よかった。そろそろ来る頃かと思って淹れておきました」


俺が座ったのを見ると、用意していたらしいコーヒーを注いで目の前に置いた。


「相変わらず気が効くんだな」

「えへへ、そうですか?ありがとうございます」


裏表のない人の良い笑顔に口元をゆるめ、コーヒーを飲む。

部長の淹れるコーヒーは美味い。

溜まったストレスもここにきて飲むこの一杯で拡散されていく気さえする。


「…(…当たり前のように…本部にくるたびここにくるようになってしまったな…)」


自分の立場を忘れたわけではないが、うまくこの部長に飼いならされている気もする。

それに対して、悪い気がしないのが問題だ。

美味いコーヒーと、ようやく16になったばかりの少女の情報伝達部長だから、なにか利用できるかもしれない。

その2点の理由だけなら、自分にも納得がいっていたはずだ。


「(だが…)」

「?」


目の前で、俺に対して少なからず気があるのがすぐにわかるような幸せそうな笑顔。

この笑顔を見たいがため、来ている節もある自分に参る。

いつからだ、この少女にはまりこんでしまったのは。


「(…いや、助けた時点で既にだったのかもしれないな…)」


はしごの上から落ちてきた時、一瞬見開かれたエメラルドのようなグリーンを見た瞬間、受け止めずにはいられなかった。


「(…厄介なものを抱えてしまったな)」

「どうかしました?」

「…いや、なんでもないさ」


きょとんとする部長の頭を撫でれば、気持ちよさそうに彼女は目を細めた。

…いちいち癒されて仕方ない。


「…(…しかしこちらから関係を発展させるのはな…)」


恐らく部長も俺に気がある。だから部長に任せてみよう。

部長が今以上の関係に動かそうとしたら、俺も動かそう。


「(…海賊は本来、欲しいものは手に入れるものだ)」


石を転がせ

(ドフィにもその時に連絡だな)
(俺が恋なんてものをするとは思わなかったが)



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