「えへへ、いい匂い」

「幸せそうだねぇ」

「だってみなさん、こんなにたくさんくれたんですよ!」


本部のみなさんからもらった沢山のお菓子を、目の前に座るクザンさんに見せる。

バスケットの中からする、甘い甘い匂いにわくわくして仕方ない。

色とりどりの包み紙に幸せいっぱいな気持ちに浸る。

あ、勿論ハロウィンがお菓子をもらうだけの行事じゃないのはわかってますよ?

でもほら、お菓子をもらえる行事でもあるならそれにものっからないとですから。

なんて言い訳はこの辺にして、なにから食べようかなあと迷っていると、後方から名前を呼ばれた。


「アヤちゃーん」

「?ボルサリーノさん?」


振り返れば、いい笑顔のボルサリーノさん。

なんだろう?と首を傾げれば渡し忘れたお菓子があったと言われた。


「あれだけくれたのにまだくれるんですか?」

「うん。子宝飴っていう面白いキャンディの話を聞いててね…是非アヤちゃんに食べてもらいたいなあってねェー」

「面白い…ですか?」

「そうだよォ…はい、どうぞー」


きょとんとした私の前にしゃがみ、差し出してきた棒つきキャンディは、見たことのない変わった形をしていた。


「!ちょ、あんたそれっ…」

「ふぇー…たしかに変わったかた…」


クザンさんが後ろで慌てたような声を出したのを聞きながら手に取ろうとしたら

誰かの手が割って入り、キャンディが奪われ目の前で一瞬にして溶けた。


「え、…」


ぱちくりと目を瞬かせて、割って入った手の持ち主を見ればそれは赤犬さんだった。


「あ、赤犬さん…?」

「サカズキったら邪魔しないでよォー」

「黙らんか!!よくもアヤにセクハラまがいな真似を…!」

「ただの冗談じゃないのー。そんなに気にする方が意識してるみたいだねェ…サカズキったらむっつりー」

「焼き殺されたいんじゃなボルサリーノォォ」


目の前で言い合いを始めた二人に、いろいろと理解が追いつかず呆然としているとクザンさんに呼ばれ、手招きされた。


「その二人はほっといて、あっちでお菓子食べような」

「い、いいんですか?というか結局あれはなんだったんですか…?」

「あー……アヤが女になる時にわかるよ、うん」

「?」


頭を撫でられながら諭されたが、いまいちピンとこない。


「まあ、まだ知らなくて大丈夫さ…それより菓子食べなくていいのか?」

「あ、食べます!」


クザンさんの言葉にバスケットのお菓子を思い出して、よくわからないことより、目の前の幸せに意識を戻した。


Halloween is so sweet !!


(結局子宝飴は謎だけど、他のお菓子は美味しいから、やっぱりハロウィンはよかんべなぁ)