「ボルサリーノさぁん、とりっ…」
「はい、お菓子だよぉー」
にっこり、と擬音がつきそうな笑顔で焼き菓子の匂いがする大きな箱を差し出された。
お菓子は嬉しいけれど、最後まで言わせてもらえなかったのがなんとなく不満で口をとざす。
すると、不思議そうな顔をしてボルサリーノさんがしゃがんで顔を近づけてきた。
「アヤちゃんどうしたのー?」
「…お菓子はもらいますけど、トリックオアトリートって最後まで言わせてくださいよー」
「だってお菓子欲しいから言うんでしょ?」
「そ、それ言われたら身も蓋もないんですけど…」
本当にこの人は、とため息を吐き出せば、ボルサリーノさんは気にせず、頭の猫耳を掴んできた。
「おやぁー?なにか生えてると思ったら猫耳だねぇー似合うよォー」
「ありがとうございます…でも別に生えてるわけじゃ…カチューシャですし…」
さわさわと揉むようにいじってくるボルサリーノさんに微妙な感じを抱きながら言えば
きょとんとされたあと、残念そうな顔をされた。
そんな顔されても、私も困るんですが。
「生えてたら性感帯だったのにねぇー」
「せいかんた…?よくわかりませんが、残念でしたね…?」
聞きなれない単語に疑問を浮かべつつ言えば、来年は生やしてからきてね、と無茶苦茶なことを言われた。
生やしてきてねで、猫耳生やせたら私はもうノーマルは人間じゃないですし。
そう思いつつ言えずにいると、ボルサリーノさんはまだ仕事があるらしく、またあとでね、と立ち上がった。
「来年のハロウィン、楽しみにしてるねぇー」
「(いや無理ですって…というか私に猫耳生えたら何が楽しいのかな…)」
Tricky Sweets
(…来年は猫耳生やせない代わりにお菓子用意しようかな)
(来年はこっちから悪戯させてもらってもいいかもねェー)