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「あら、雨…(ということは…)」

「こんにちは、アリス。ごめんね、私の雨に濡れてしまうよ」

「やっぱりトリシャ…」


さぁさぁと降りだした雨。

このおかしなワンダーランドに雨が降る理由は一つだけ。

女の子なのに雨蛙なんて役割りをしてる、普段は比較的常識人のトリシャが外にでてるから。


「外にでてたのね」

「今日は、次の時間帯はお仕事だから。それよりアリスが濡れたら大変だね。私の傘をあげるよ」

「あ、ありがとう…」


渡されたのはお決まりの大きなハスの葉。

蛙といえばハスだという不思議な固定概念で、彼女が傘として持ちあるいているモノを渡される。

もらっても困るのだけど、天使のような笑顔と子どもの純粋さを前に、断りにくくて、ついいつももらってしまう。


「そうだ…アリス、ねぇアリス…君は今からどこへ行くの?」

「あ、私は今から帽子屋屋敷にいくの」

「…ブラッドさんのおうちか…ならブラッドさんに見つかる前に、私はお仕事にいくよ」


紅茶を飲まされたら嫌だから、と笑うトリシャに苦笑を返す。

トリシャは紅茶が苦手らしいから、見つかるたびに紅茶を好きにさせようとする紅茶狂いのブラッドに、無理矢理紅茶を飲まされている。

それはますます嫌いになるだろう、と思いながら見つけた時は止めてるけど、あんまり効果はないようね。


「それじゃあさよなら、アリス。私は行くね」

「ええ、さよなら。また喫茶店にいくわ」

「うん、待ってるね…」


そして私は、森の奥に雨に濡れながら歩き出したトリシャの背を見送った。

トリシャが見えなくなり、しばらくしてワンダーランドの雨がやむ。


「(なんであの子がいる時だけ、雨が降るのかしら…)」


ふと現れた疑問は、雨に洗い流された綺麗になった空に消えた。


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