海賊短編 | ナノ
澄んだ水より透明な



「クザンさんたら、また寄り道してたんですか?」

「んー?ちょっとねぇ…まあ土産があるから許してよ」


久しぶりに本部に戻れば、アヤが迎えてくれた。

嬉しげにぽすっと抱きついてくるいまだ俺たちの半分の身長もない場所にある頭を撫でる。

迎えてくれる女がいるとはこんなに癒されるものなのか。


「私より、センゴクさんが怒ってましたよ」

「あらら…仕方ないな。あ、これアヤに土産ね」


しゃがんで、いって来た街で買ってきた鳥のぬいぐるみを渡せば

驚いたようだったが照れたようにわらった。 (買う際に変な目で見られたのは言わないでおく)


「私もう17歳なんですが…でもありがとうございます…」

「年頃の娘がなにが欲しいのかとかおじさんの俺にゃわかんないから許してよ」

「クザンさん、上層部の中じゃ若いじゃないですか」

「いや、上層部で一番若いのお前さんだからね」


くすくす、とおかしそうに笑うアヤを見つめる。


「…(…あと何年、言えずにいれるかね…)」


政府と軍のために、残りの一生を売ってくれと。


「(…知ったらアヤでも流石に嫌がる、か)」


自分の全てを引きかえに、知りたくもねぇ世界の闇や裏側を知って

世界と正義のために本部に身柄を拘束されるなんざ。


「…アヤ、」

「?なんですか」

「俺ぁ、お前さんが本当に可愛いよ」


道具にしている、そのひた隠した事実はある。

だが今俺が、アヤを可愛がってる感情は嘘じゃねぇ。


「Σい、いきなり何言ってるんですか?!」

「…なんとなくだ。ほら、アヤは貴重な若い子だから」

「なんですかそれー」


今はまだ、知らねぇふりでいいだろう。

この澄んだ純粋さを、いつか来る日まで奪う必要はない。



(透明なのは、お前さんだけだから)

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