シーソーな与太話
天才、という者がいるのなら、恐らく後輩の彼女のことだろう。
実力は勿論だし、一見するとただの唯我独尊な我儘ばかりだが、その我儘の結果は大抵想定以上の功を成す。
それは、彼女のみに見えているなにかがあると思うんだよね
サカズキはそういう部分も嫌悪が一周して息が合うくらい嫌いみたいだけど
わっしはその天才な後輩ちゃんが、なかなか面白くて嫌いじゃあない。
***
「ネメシスちゃ〜ん」
「ネメシスは留守ですが」
「目の前にいるのに雑な嘘つかねェでくれよォ〜」
にまにまとしながら目の前に座るボルサリーノ先輩。
あの正義の忠犬野郎…じゃなかった、サカズキ先輩よりは嫌いじゃないが、腹黒そうな笑みは昼のおかずには重い。
「じゃあ正直に言うと、先輩のにやけ顔見ながらのランチタイムは遠慮したいです」
「おォ〜…君ににやけてるとは言われたくねェなァ〜」
「私のは可愛いらしいにこにこです」
「え、なんか言ったかい〜?」
「よく聞こえるように指銃で耳の穴広げてやりましょうか?」
「怖いなァ〜」
何皿目かのカレーを飲み込みながら、淡々と無意味でくだらない言葉の応酬を繰り広げる。
そろそろ黄色いニット帽を目元まで降ろしてやろうかと思った時、私の髪の一房にボルサリーノ先輩が触れた。
「黙ってりゃァ美人なのに残念だよねェ〜君は」
「なんですかいきなり気持ち悪い」
「見た目だけは好みなんだよねェ〜…見た目だけは」
「うわ今鳥肌立ちましたよ。というか2度言いやがりましたね」
「ほんと残念だなァ〜」
「クソ猿先輩ふざけてるとぶっとばすわよ」
いい加減本気で気持ち悪いから、髪に触れる手にフォークを刺そうとしたら光になってよけられた。
武装色を使えばよかったわ。
「で、本当の用件はなんですか?」
「からかわれてくれないねェ」
「どっかの犬見たく単純にできてないので…それより用件がないならもういきますけど」
「ああ〜実は君のとこと今度合同任務あるから、戦闘イメージも兼ねて手合わせしたいなァって」
「それ言うまでにどれだけ無駄な会話させるんです」
「じゃあ無駄にしないように一回くらい戦場の熱ってことでどうだい?」
「うふふ、薬盛られても貴方とサカズキ先輩とクザンだけはないですねー」
(手厳しいなあ)
(だって10割冗談でしょう)
(いやァ今日は9割だよ)
(溜まってんですか)
(…やっぱり残念だよねェ君)
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