同じ海、違う航路
「…くー…」
「シス姉ちゃーん!起きて冒険の話聞かせてくれよー」
「ん…っ…あら、ルフィ…おはよう。もうおやつの時間かしら?」
昼寝から無理やり起こされ、いまだ続く眠気のまま、あくびをして目をかすかに開ければ、ルフィがお腹の上にまたがっていた。
「そうじゃなくってこの前の冒険の話ー!」
「あぁ…また聞きたいの?仕方ない子ね、いいわ。話してあげる」
ルフィの頭をなでながら苦笑し、上半身を起こす。
「さあ、なんの話からしようかしら?」
「んーとなぁ…遠くて危険な海の話がいい!」
「あらあらルフィったら…この島から見たら、全部遠くて危険な海なのよ?」
ざっくりとした要望に、くすくすと声が漏れる。
「そうなのか?」
「ええ、常識を超えたすごいことが遠い遠い海にはたくさんあるわ…」
「なんかワクワクするな!」
「ふふ、ルフィは大物になるわねぇ」
それでこそ我が甥っ子、とわしゃわしゃ頭を撫でると嬉しそうに笑うルフィ。
なんて可愛いのかしら。兄さんとは似ても似つかないわ。
「俺絶対大きくなったら海賊になって冒険するんだ!」
「ふふ、おっきな夢ねぇ」
「シス姉ちゃんがした冒険よりすごい冒険してやるからな!」
「あらあら、なら今度はルフィから私が冒険の話を聞く番になるのかしら?」
その日を楽しみにしておくわと笑えば、任せとけとなんとも頼もしい返事が返ってきた。
同じ海、違う航路
(この子はきっと、今は遠い海を震撼させるわ)
(それは期待ではなく、確信)
prev next