愛を加算
「エース、ダダンたちからまた喧嘩したと聞いたわ」
「…」
「…怪我はもう平気?」
ぱしんっ
「!」
帰ってきたばかりの、返事を返さないエースに近づきしゃがんで
にこにことしたまま、そっと頬にあてられたガーゼに触ろうとすれば、手を払いのけられた。
「…俺に構うなよ」
「…エース、何をやさぐれているの」
「ネメシスには関係ないだろ!」
「まあなんて悲しいこと言うの!そんなこと言う子には愛の鉄槌よ!」
ばきぃっ
あまりにもショックな言葉に思わず反論と共になぐる。
「Σぐふっ!!」
「Σエースうう!!」
「エースにそんなこと言われたら悲しくて私死にそうよ?」
「エースのが先に死ぬわ!てかお前さんさっきからずっと笑ってるよ!!」
「あ、でも見てくだせぇ!ネメシスちょっと眉が下がってる!!」
「あ、ほんとだ!って分かりにくいわァァ!!」
「ちょっとうるさい」
「ういっす」「すいませんっ!」
ダダンたちを黙らせたあと、痛そうにしているエースに近づき、身構えたエースを抱きあげる
「なっ!離せよ!」
「エース、なぐってごめんなさい。でもね、関係ないなんて言って欲しくないのよ。私は貴方と関係していたいから」
「!…」
「貴方は貴方よ。どこの出であろうと、誰の子であろうと、エースはエースなの。そして私は、貴方を貴方として愛してるわ」
貴方はもう、私の家族の一人だもの。
そう言い、エースの黒髪をなでて額にキスを落とす。
真っ赤になる姿が子供らしくて、笑みが深まる。
、
「だからね、もう関係ないなんて言わないで…貴方を愛してる人がここにいることを忘れないで…」
それに、貴方が貴方を生きるならきっと貴方をたくさんの人が愛するわ。
そういう思いを込めてにっこりと笑えば、エースは俯いて、小さくごめんとつぶやいたのが聞こえる。
その言葉に、今日は美味しいものでも食べましょうかと小さな背中をなだめるように叩いた。
(この子が悪か善かは、この子が生きて歩く長き道が決めてくれるでしょう)
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