海賊短編 | ナノ
強欲レディ



ネメシスは昔から正義感の強い娘で、海軍に入ると言ってくれた時どれだけ嬉しかったか。

家族思いで優しくて、たまにものすごい笑顔が怖い時はあるが

しっかりした、自慢の可愛い娘じゃった。


「なのに何故こんなふらふら浮ついた娘に…」

「ガープ中将、うるさい」

「お前くらいお父さんと呼ばんか!」

「いやよ、血縁関係は伏せてるの」


変わらない娘の、にっこりした笑顔の拒絶に泣きたくなる。

どこで育て方を間違えたんじゃ、わしは。


「親不孝もんめ…それに、お前一人くらい海軍になってくれてもよかったじゃろ…」


なると昔は言っていたくせに、と恨み言を吐いてみれば、珍しくネメシスは僅かに笑顔を歪めた。

深い黒の瞳を、親のワシですら、久々に見た気がする。


「…その言い方はずるい。フェアじゃないわ、お父さん」


私がどれだけ家族が大好きで大切なのか知っていて言ってるもの。

そう言って、目の前のマカロンの山からひとつをつまんで口に放り込むネメシス。


「大好きよ、お父さんのこと。でも兄さんのことも、ルフィたちのことも私は大好き」


私も結局、欲張りで大食らいなの。


「マカロンだって、ストロベリーもチョコレートもバナナも抹茶もどれか一個なんて選べない。全部否定できない味わいがあるし、大好きだわ」


そういうことなのよ、とまたにっこりと笑ってマカロンを食べるネメシスに

どうしてこうワシに似て頑固な性格になったのかと、ため息が出た。



(あ、もう一皿追加で)
(お前太っても知らんぞ)
(全部胸にいくから構わないわよ)
(少しは恥じらいを持ってくれネメシス!)



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