舌先のラム酒の味わい
「シス姉ちゃん早くこいよー!」
「はいはいルフィ、そんなに焦ると転ぶわよー」
フーシャ村の甥っ子のルフィの様子を見に、数日前から久振りに帰ってきていた。
少し前からこの島を拠点に旅している海賊が、今日戻ってきたらしく
その海賊に懐いているルフィが、姉ちゃんにも会わせてやると息巻くので港まで降りてきた次第だ。
「(さて…どんな海賊かしらねぇ……って、あらぁ?)」
あの旗見覚えがあるわね、と海賊旗を眺めていると、船から降りてきた男にルフィが目を輝かせたのがわかった。
「シャンクス!」
「(…シャンクス?)」
「よう、ルフィ!帰ってきたぞ」
ルフィがかけよった男はやっぱり、いつか酒場で酒をご一緒した赤髪のシャンクス、まあつまりお頭さんで
やっぱりこの船は赤髪海賊団のものかと納得した時、お頭さんがこちらに気づいた。
「!ネメシスじゃねぇか!」
「ふふ、奇遇ねぇお頭さん。うちの甥っ子がお世話になってるようで」
「甥!?ルフィがか!そりゃすげえ偶然だな」
「ええ、ほんとに」
にこにことしたまま、快活に笑うお頭さんに頷いていれば、お頭さんが思い出したように船の上に声をかけた。
「おいベックマン!二度目の偶然あったぞ!」
「なんだお頭…!ネメシス…!?」
「あら…ご機嫌よう、ベックマン」
この島に私がいることがそんなに意外だったのか、くわえていた煙草を海に落としたベックマンを見て、おかしくて笑みを深める。
「私と二度目の偶然があった人は、貴方が実際始めてよー」
「!…ふっ、なんだそりゃ」
「ふふ、だって一期一会の世の中で、もう一度会うなんてそうそうないわ。
だからこそ二度目の偶然を信じてみるのって、なんだかロマンチックじゃないかしら?」
今みたいに、とにっこりと笑ってみせたら、たしかに悪くはない、と返事がふってきた。
「ふふ、くだらないって一蹴しない貴方が好きよ」
再会記念に一杯くらい奢るわ、と笑顔のままひらひらと手をふった。
(…そういやあネメシス、お前あの時二度目が会ったら…)
(ああ、寝るのも考えるって話?別に貴方ならいいわよ?私経験ないけれど)
(…ないのか)
(あら、二度目の偶然の出会いも、寝るの考えるなんて言ったのも貴方が初だもの)
(…、は?おい、そりゃあ…)
(なあなあシス姉ちゃん寝るってなんだー?)
(んールフィが大人になったら教えてあげるわー)
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