さよならの代わりに
「(なんて静かな夜・・・)」
夜の海に瞬く星を見下げる。
星の海を滑るこの船に、船長はいない。船員も減りました。
ある島の疫病にかかり、別れてしまったのです。
私はその病を知っていました、だから聞かれた時に、この船では治せないことを告げました。
それはどうしようもない真実だったからです。
情報屋は真実を語らねばならない。
それが、重い重い真実でも。
すると、夜風にのり流れてくる静かなバイオリンのメロディ。
少し船の上をみれば、バイオリンを構えたらよく知っているアフロ頭。
「…ブルック…」
「ヨホホホ エレシアさん、明日にはまたふらりと一人旅でしょうに、寝なくてよろしいんですか?」
「…あら、貴方こそ明日からヨーキの代わりに船長代理でしょう…寝坊したら笑えませんよ?」
風になびく髪を押さえて笑えば、また彼の朗らかな特徴的な笑い声が響く。
「大丈夫ですよ、みなさん起きるのが遅いですからね!」
「ふふっ…それもそうですね…なら、もう少し起きててくださる?」
「おや、何かご要望が?」
「ええ、私もあの歌を歌いたくなったから、メロディをお願いできます?バラードで」
届けたくなったのです、この歌を。
別れたヨーキや、クルーたちに。
「気にいってるんですから、このルンバー海賊団を」
にっこりと笑ってみせれば、ブルックもわらった。
「ヨホホホ…わかりました。では、」
バイオリンの軽やかな音が響きだす。
そのメロディに合わせて口を開く。
「…ビンクスの酒を…届けにゆくよ…♪」
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