ばちん、
痛々しい音が部室に響き、室内にいた全員が音のした方を見た。
「お前なんか嫌いだっ!お前はキャプテンに向いてないんだよ!」
「…そんな、霧野っ…!」
「自分はキャプテンに向いてるとでも思ってたのか?はっ、とんだ自惚れだな!」
「…そんな、こと思って、」
かつ、かつ、かつ、ばたん。
今度は何もかもを拒絶するような扉の閉まる音。
霧野が部室を出て行ったのだ。
残されたのは呆然と扉の方向を見つめる神童と、その他の部員たち。
静寂。
そのなんとも居心地の悪い沈黙を破ったのは、扉の開く音と「皆早いなー!」という円堂監督の元気な声だった。
ずるずる、すとん。
その声に何かを繋ぎ止めていた糸を切られたらしい神童が座り込む。
「…う、くっ…きり、の…」
続いて神童の唇から苦しそうな嗚咽が漏れた。
その声に反応した円堂監督が、怪訝な顔で「…霧野?」と呟く。
監督の視線が部室をぐるりと一周し、
「霧野が来てないのか?」
監督の口から言ってはいけない言葉が吐き出された。
南沢があ、と声を漏らすと同時に、ばったん!と大きな音が鳴った。
「え、あ、神童!?」
監督が慌てて声をあげたが、時すでに遅し。
部室に神童の姿はなかった。
嫌いに