ほんとうに大事なことは

君が一番好き、ただそれだけ




「おれ、おおきくなったららんまるのおよめさんになる!」

「わー、たくとがおよめさんだなんてうれしいな」

「やくそくだよ、らんまる!」

「うん、やくそく!」



あんな会話をしたのはいくつの頃だっただろう。

あの頃の俺たちは、男が男の嫁には行けない事や、もしかすると相手が同姓であることも分かっていなかった。

意識していなかった、の方が正しいかもしれない。

いつだって俺の傍には霧野がいたし、霧野は俺の憧れだった。

悔しくて泣いたときも、傍で慰めてくれた。

その慰め方は時には不器用で乱暴だったけれど、優しかった。

美しい外見に反して男らしい霧野は、いつも俺の喜びだった。

だけど、霧野は。そうは思っていないだろう。



「何してんだ、神童」

背後から今まさに考えていた人の声がして、俺は思わずものすごい勢いで振り向いた。

目の前には綺麗な霧野の瞳。

そういえば、霧野が俺を「拓人」と呼んでくれなくなったのはいつだろう。

「考え事か?」

怪訝な顔で俺を見た霧野は、一瞬の間の後そう尋ねてきた。

全く間違っていないので素直に頷く。

ふーん、とつまらなさそうに言って霧野は俺に背を向けた。

ああ、もう霧野は俺に興味なんかないんだ。こんなにもやもやしてるのは俺だけ。

そう思うと、瞳の奥からじんわりと温かいものが溢れてきた。

その涙が瞳から溢れ出た、その瞬間に背を向けていた霧野が振り向いた。

「み、見るな…!」

嗚咽を堪えながら必死に顔を伏せながら声を出す。

こんな恥ずかしいところ、霧野には見られたくない。

だが、くすくす、と笑う声が聞こえて、俺は伏せていた顔を上げてしまった。

「何が、おかしい…んだ、よ…!」

涙目で睨みつけると、霧野は手を口元にあてて更に笑い出した。

「ふふ、拓人は本当に変わってないな」

拓人。霧野の唇から紡がれた自分の名前に、俺ははっと目を見開いた。

「霧野…」

「蘭丸、だろ?拓人」

そう言って手を伸ばし、指で俺の涙を拭ってくれる蘭丸はやっぱり男らしかった。

「大きくなったら俺のお嫁さんになってくれるんだろ?」

「忘れて、なかったのか…?」

蘭丸がそんな幼かった頃の戯言を覚えていたなんて。

嬉しくて、再び涙が溢れた。
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