「あ、」
視線の先に愛しい人の姿を見つけ、倉間はぽつりと声をあげた。
横にいた速水が「どうしたんです?」と尋ねる。
倉間は少し照れたように頭を掻いてから、その指を遠くにいる愛しい人へ向けた。
「ほら、あれ」
「ああ、南沢先輩」
速水が納得して頷く。
と、
「速水!と倉間?何してんだ、そんなとこで?」
遠くにいたはずの愛しい人が、倉間と速水に向かって歩いてくる。
気付いてもらえた嬉しさと、速水のほうが先に名前を呼ばれたことに対する苛立ちが倉間の中で綯い交ぜになった。
「次、お前ら理科か?」
南沢が倉間に向かって尋ねる。
「そうスけど」
「やっぱり?担当誰だよ」
「高田っス。あの禿げ」
「ああ、俺は去年木村だったよ。高田は厳しいけど悪い奴じゃないだろ?木村はもう最悪だったぜ」
「へぇ…」
南沢と倉間が楽しげに会話しているのを眺めていた速水が、突然あっ、と声をあげた。
何だよ、と二人が振り向く。
「もう授業始まっちゃいますよ!」
速水はそう叫ぶといきなり倉間の手首を引っ掴み、走り出した。
引きずられていく倉間に、南沢は大声で言った。
「また、昼休みにな!」
* * *
「あ、南沢さん」
「よう」
退屈な理科が終わり、駆け足で屋上へ上ると、南沢さんはもう来ていた。
「早いスね」
「4限、現代文だったからな。西条の」
西条という国語教師の授業は、超ハイテンションハイスピードで進むことで有名だ。
「西条の授業は早く終わるし内容面白いしいいんですけど…テンション高すぎて疲れません?」
「分かる分かる。寝れねぇよな」
南沢さんと過ごす一瞬一瞬が愛おしい。
こうやって交わす他愛無い会話も、南沢さんとするだけでものすごく楽しいものになる。
俺は単純な人間だから、一日に何回か南沢さんを補給するだけで毎日元気に過ごす事ができるんだ。
艶やかな紫の髪だとか、白くて綺麗な肌だとか。
見ているだけで、俺は幸せになれるんだ。
抹茶様へ、相互記念です。
倉南初挑戦でしたが、南沢さんの話し方わかんねぇ…!
お持ち帰りは抹茶様のみどうぞ。
抹茶様からのみ訂正受け付けます。