「雨だな…」
窓の外を見て神童がぽつりと呟く。
まだ明るい空に不気味なほど黒い雲がぽつんと浮かんでいる。
「え、降ってきたのか?」
雑誌を読んでいた霧野が驚いたように言った。
「ああ。霧野、傘…持ってないよな」
神童はそう言うと、心配そうな視線を霧野に寄越す。
神童は心配性だ。
幼いときからずっとそう。
霧野が転んだりしたら、神童が絶対にどこかからすっ飛んでくるのだ。
痛みには強い霧野だから、少しくらい転んでも何も思わないのだが。
神童はそうはいかないようで、
「らんまるくん、痛くないの?痛いよね、大丈夫?」
と目いっぱいに涙を溜めて聞いてくる。
その様子を思い出しながら、霧野はかわいかったなぁ、と呟いた。
「何がだ霧野」
その呟きを聞きとがめた神童が霧野を振り向いて尋ねる。
「いや…ちっちゃい時の神童かわいかったなーって」
霧野がそう言うと、神童は顔を真っ赤にした。
「な、な何を…」
その様子を霧野がにやにやしながら見ていると、神童はいきなり立ち上がった。
「蘭丸なんか、嫌いだ!」
顔を真っ赤にして目に涙を溜めた神童は、ずんずんと足音を立てて部屋を出て行ってしまった。
どんな顔をして戻ってくるのか楽しみだな、と思いながら霧野はまた雑誌を読み始めた。
時雨模様
なんだこれ意味分からん。
久しぶりの蘭拓でございます。