こちらの続き。
「うわ、白石先輩がいはるで!」
「ほんまや、忍足先輩もや!」
窓辺から聞こえてきた声。まるであの時のデジャブ。
あの後、俺は白石部長と帰ろうとしている謙也さんを拉致してぜんざいを奢らせた。
二人して古びた喫茶でぜんざいを食いながらテニスの話とか、楽しい話をして。
改めて浮気禁止、と念を押したのだが。
(ちゅーか謙也さんが浮気したんじゃなくて俺が嫉妬しただけの話なんやけど)
謙也さんは人気やからやっぱ心配になってしまう。
と、その時、窓辺から不穏な声が聞こえてきた。
「なあ、あれ…誰?」
「ああ、白石先輩の隣にいはる人?誰やろ、ジャージきてるけどウチのじゃないよなぁ…あ、忍足先輩に話しかけよった…」
「ほんまや…女の子、やんな…?」
“女の子”
その単語を耳にした瞬間、俺はものすごい勢いで立ち上がった。
がたん、どかどか、ばしん、ばん。
立ち上がって教室を出るまで、この間10秒。
階段をどたどたと駆け下りてグラウンドへ向かう。
謙也さんを信頼してないわけじゃないけど、鈍い奴やからもしかしたら一緒に遊びにいく約束とか…!
校舎を飛び出し、テニスコートまで一直線に走る。
テニスコートにつくなり謙也さんの横に居座る憎きジャージ女に向かってスライディングする。
「うおわっ…!何してんの財前…!」
俺のスライディングの標的となった女を庇って部長が立ちはだかる。
部長に止められた俺はちっと舌打ちをして女をにらみつけた。
その女は…女?
顎のラインくらいで綺麗に切られた栗色の髪に、色白の肌。
微笑みを浮かべて「元気な後輩だね」と優しすぎて怖い声で呟くなんとも見覚えのある…
青学の不二が、そこに立っていた。
「あ、ちょ、ごめ、すまん不二クン、ちょ、」
部長が冷汗を流しながらその女…ではなく不二に謝る。
「いいよ白石。君は悪くないから。悪いのはこの後輩くんでしょ」
不二はにこにこ笑いながら俺に近づいてきた。
不二の後ろでわたわたしている謙也さんを見て、俺は思った。
すまん謙也さん、俺はもうあかんわ。
なんで東京の学校にいるはずの不二が平日の放課後に大阪にいるのか、という疑問は俺の頭の中には全くなかった。
久しぶりのテニプリでございます…!
友人Hの好きな光謙(でも謙也出てこない)ギャグでございます!
これはHさんへのプレゼントです。
お持ち帰りはHさんのみどうぞ(これは決してイニシャルにHが着く方という意味ではありません)