向日葵さんのサイト「大きな空を眺めたら」の再開記念に書かせて頂きました。

この作品のお持ち帰りは向日葵さんのみOKとします。



* * *



「わあ、見て、忍足先輩がいはる!」

窓辺から聞こえてきた黄色い声に反応して振り向けば、

「ほんまに!?」

自分と同じく声に反応して窓へ駆け寄っていく女子たちの姿。

なんとなく面白くない。謙也さんは俺のもんやのに。

だからといって女子みたいに窓辺に行って手を振るなんて事はしたくないし。

俺は、深い溜め息をつくと、鞄の中からヘッドホンを取り出して耳に付けた。

流れ出すのは、謙也さんが気に入っていた調子のいいラップ。

余計に切なくなった気がしたけど、気にしないことにして音量をぐっと引き上げた。



その曲を何度聞いただろうか。

軽く30分は立っているだろうに女子たちの黄色い声はまだ聞こえている。

(ていうか謙也さん、そんな長いこと外で何しとんねん…)

冷やかしてやろうと思い立ち、ヘッドホンをはずして女子たちの方を見た。

「あっ、忍足先輩こっち見はった!」

「ほんまや!…なんか言ったはるで?」

女子たちの会話に不穏なものを感じた俺は、続きを聞かないためにもう一度ヘッドホンを装着する。

と、

「なあ財前!忍足先輩があんたんこと呼んだはるで!」

窓辺に居た筈の女子がひとり、俺の肩を叩いて言った。

「あんたなんか知りません、って伝えといて」

「え?なんでぇや。自分で言うたらええやん?」

「ええから伝えろや」

「はいはい」

さっきは行こうとしてたくせに、今行くのはなんとなくだるくて。

謙也さんが慌てて走ってきそうな台詞を言ってやる。



「財前!忍足先輩が『怒らんといてぇな!今度ぜんざい奢ったるから』やって」

やはり、あの人は俺が怒っているものと思ったらしい。

なんで怒られてるのかも知らないくせに謝るところが謙也さんらしいな、と思って俺はその女子に言った。



「怒ってへんけどぜんざいはいただきますわ、って伝えといて」





*向日葵さん、本当に再開おめでとうございます!これからも応援しています*


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