「ばれちゃったな」
小声で呟くと、グランは隠れていた物陰から素早い身のこなしで出てきた。
横にレーゼを従えている。
「ここに何しに来た」
アフロディの問いに、グランはいつもの読めない微笑を浮かべたまま答えた。
「君と話しに来たんだよ、アフロディ君」
そのまま視線を動かして風丸に微笑みかける。
"あの時"と全く変わっていないグランの笑顔に、風丸の背筋に冷汗が伝う。
「久しぶりだね…風丸くん。君の欲しがっていた力は手に入ったかい?」
「…うるさい!」
風丸は怒りのままに拳をグランに向かって突き出した。
が、間違いなくグランの鳩尾を打ったはずの拳は、何か固い物によって弾き返される。
無表情のアフロディが、その手で風丸の拳を受け止めたのだ。
「何する…!」
「奴らの挑発に乗ってはいけないよ、風丸くん」
そう言ったアフロディは未だ笑顔のままのグランに向かって静かに言った。
「君が何のつもりかは知らないけれど…少しくらいなら話を聞くよ」
風丸がはっと目を見開く。
「何をするつもりだアフロディ…!」
「風丸くんは帰っていて」
アフロディはそう言うと、風丸の背を門の方へと押しやった。
風丸が振り返ったとき、アフロディは怒りとも悲しみともつかぬ不思議な表情をしていて、風丸は彼の言葉に従ってそのまま帰るしかなかった。
一応これで序章完結となります。
これからのストーリーの鍵を握るのはやはりアフロディとグランでしょうか。
アフロディが敵なのか味方なのかもまだ謎。
円堂や風丸は味方と思っていますが、アフロディにはそこまで敵味方の意識はありません。
風丸は恋人なので大切だけど、僕には僕のやりたいことがある、といった感じでしょうか。
これからのアフロディの行動に注目です。