「そうか…また”エイリア”が動き出したんだな…」
円堂は、遠方の友人からの手紙を見ながら呟いた。
彼の住む場所からここまで、およそ3日かかる。
”エイリア”がここに書かれているような行動をしたのはおよそ3日前ということだ。
そう考えるといてもたってもいられなくなった円堂は勢いよく立ち上がり、部屋を出て行った。
* * *
「N-18が襲撃されたか…間違いなくダイヤモンドダストの仕業だな」
”真ゲルトルード”の本拠地であるS-07の貴族・雷門家の邸宅。
その一室で、円堂に例の手紙を見せられた鬼道は、いつもより低い声でそういった。
N-18は、首都からはかなり離れた場所で、”エイリア”の監視も少しだけ緩いため、”真ゲルトルード”の支所を置いていた場所だ。
ダイヤモンドダスト、N-18という2つの単語に、部屋の隅で何かを探していた風丸が反応する。
「N-18が?ということは狙われたのは支所か…あいつらは無事なのか?それに鬼道、なんでダイヤモンドダストなんだ、あそこはプロミネンスの管轄じ
ゃなかったのか?」
「確かにそうだが…プロミネンスは今、C-02で”ゼウス”退治の真っ最中だ」
「ああ…あいつらか。アフロディは無事かな」
鬼道の言葉を聞いて円堂が呟く。
”ゼウス”とは、円堂たちが”真ゲルトルード”を組織する以前から首都の近く、C-02の神殿を本拠に活動していたレジスタンスだ。
自らを神と名乗る不思議な集団で、首領のアフロディと円堂はかなり仲の良い友人である。
「アフロディは大丈夫だろう、何せ神だからな」
風丸はそう言ってくすくす笑った。
そしてすぐに真顔に戻り、「でも…なんでダイヤモンドダストが今頃突然に支所を襲撃するんだ?」と呟く。
プロミネンスを除くと、N-18に一番近い場所を監視下に置くのはザ・ジェネシス、”エイリア”最強の部隊だ。
ダイヤモンドダストの持ち場はVからZ…N-18からは程遠い場所にある。
「それは分からないが…こんな考えなしの襲撃を行うのはガゼルとバーンだけだ。グランはこんな不意打ちの襲撃などしないし、その命令に従うべき格
下…デザームとレーゼは勿論こんなことはしない」
敵の内情を知り尽くした鬼道らしい言葉だったが、円堂と風丸はあまり納得していないようだ。
「でも…」
そのとき、ばたばたと足音がして外から「お兄ちゃん!!」という女の声が聞こえてきた。
「支所の人達の安否が分かったわ!」
鬼道の妹らしく諜報活動の得意な春奈は、部屋に駆け込んでくるなりそう叫んだ。
何、と室内にいた3人が振り向く。
「不動さんと佐久間さん以外は全員無事だそうです…支所の建物も無事です」
少し暗い声でそう告げた春奈に、鬼道が立ち上がって詰め寄った。
「不動と佐久間はどうした!?」
「不動さんは支所を襲った輩に拉致されるところを源田さんが見たそうです。佐久間さんは裏口に回った敵を一人っきりで攻撃していたそうですが…戦
闘が終わったあと、姿が消えていたと…。死体は見付からないと聞きました」
「じゃあ佐久間も浚われた…のか?」
「それは全く分かりません。分かるのは、襲撃したのがダイアモンドダストであったことだけです」
その言葉に、風丸が目を見開く。
「やはりダイアモンドダストだったのか…鬼道の言うとおりだな」
「不動はまあいい…あいつは頭のいい奴だから、それなりになんとか逃げ遂せるだろう…しかし佐久間は…」
その横で鬼道がかなり失礼な事を呟いた。
そのとき。