「神童!」
いきなり教室の扉の方から響いた声に、机に突っ伏していた俺はびくん、と飛び上がった。
「円堂監督!?」
予想外な人物の登場に、思わず声が裏返る。
まさか監督がここまで来るとは思わなかった。
ふと斜め前方向を見ると、霧野も驚いた様子で扉を見ている。
「ちょっと来いよ!話があるんだ!」
監督に手招きされて、俺はゆっくりと立ち上がった。
朝練を休んでしまったことを怒っているのだろうか。
そう思って監督の表情を伺うが、そこに怒りは全くなく、むしろにこにこと笑っている。
戸惑いながら監督の前まで行くと、監督はすっと身を翻した。
「ついてこいよ!」
驚くほどパワフルなこの監督は、俺に一言そう言うとさっさと歩き出した。
監督にしたがって着いた先はサッカー部の部室だった。
俺が今朝、霧野にビンタされた場所。
そう思うと俺は後悔の念に苛まれていてもたってもいられなくなった。
「朝練休んですみませんでした。…他に何かありますか?」
早く教室に戻りたくて、少しつんとした声で言うと、監督はきょとんとして言った。
「別に俺はそんな話をしたかったわけじゃないぞ?」
え、と呟いて監督を見る。
監督はひどく優しい顔をしていた。
「神童、霧野と何かあったのか?」
そんな優しい顔の監督に残酷なことを問われ、俺ははっと監督を見た。
瞳の奥から生暖かいものが湧き上がる。
「…くっ、う…」
嗚咽が漏れた。
その次の瞬間に俺を包む、暖かい体温。
「…えんど、かんとく?」
驚いて俺を抱きしめている人を見ると、にっこりと笑われた。
「泣きたいときは泣けばいいさ。落ち込むならとことん自分と向き合いながら、さ?」
「…監督…」
優しく監督に言われて、俺はますます激しく嗚咽を漏らした。
「後で霧野も呼んで来てやるからな、仲直りしろよ?」
そう言った監督の胸に顔を押し付け、俺は恥ずかしげもなく泣いた。
嫌いになったと嘘を
何これ円拓?
一応蘭拓です。
-to be continued-