「俺はキセキの世代よりもお前が欲しいってことだよ」

「え?」


キセキの世代より、僕?


「はぁ〜、君は馬鹿ですか?」

「残念だが、俺は学年主席の座を譲ったことはない」

「そう意味でなくて!!」

「じゃあどういう意味だよ」

「僕とキセキの世代じゃ比べ物にならないですよ。キセキの世代のほうがいいに決まってます。だって彼らは…」

「天才だからってか?」

「……はい」


そうだ。彼らのほうがいいに決まっている。

僕なんかをもらっても結局後悔するだけだ。

後悔されてまた捨てられるくらいなら…。


「何を考えてるかはしらねーけど、俺は後悔なんてしない」

「ふっ、そんなことないです。必ず後悔しますよ」

「だからしねーっつてんだろ。俺は、お前を捨てない。絶対に」

「……そんなの信じられませんね。だって君、明らかにゲスそうな顔してますもんね」


花宮の顔は教師とかに猫かぶってそーな性悪顔だ。

そんな人の言葉なんて信じられませんね。


「はぁ、俺はキセキの世代が大嫌いなんだよ。天才だってちやほやされて調子に乗ってるやつらがな」

「たしかに彼らは少し甘えん坊な節がありますが、みんないい人なんです」

「……それだよ」

「はぁ?」

「お前にそんなに思われてるくせに捨てたキセキが気にくわねー」

「ふっ、なんですかそれ」


僕がくすくすと笑うと、花宮の表情が少し和らいだ。……様な気がした。

それからすぐに真剣な顔になってしまったから定かではないけれど。


「……お前は高校もう決めたのか?」

「いーえ、まだですよ」

「そうか…、高校行ってもバスケする気はあるのか?」

「そうですね。僕やっぱりバスケ好きなんですよね」

「じゃあ、俺の学校に来ないか?」

「……」

「俺はお前を捨てたりしない。俺の学校に来て、一緒にキセキを倒さないか?」

「……なんだか告白みたいですね」

「俺は告白してるつもりだぜ」

「……やめてください。そんなに真剣な顔されたら、信じたくなっちゃうじゃないですかっ」

「信じればいいと思うぞ」


そうは言われてもやっぱり怖い。

またあんな思いをするのはまっぴらごめんだ。

だから、断りたい。

そう思うのに、なんで自分はこんなに期待してしまっているんだろう?

この人は僕を捨てないでくれるかもしれないなんて…。

本当に僕は馬鹿だな。

まったく学習していないんだから。





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