他人にどれだけ嘘がつけても平気なふりして笑えても、
自分にだけは嘘がつけなかった。
声を聞けば胸が高鳴る。話せば嬉しい。会えないと寂しい。
こんな感情を何度も繰り返して「さて、この気持ちは一体なんなんだ?」とか考えるよりも先に答えは出ていた。
俺は、青峰が好きだ。
俺が本当の馬鹿でこの気持ちが相手への憧れからくるものなんだって処理してしまえば少しは楽だったのかもしれない。何も考えず笑っていられたのかもしれない。この気持ちが恋だと気付いた瞬間から青峰の一挙手一投足に心が振り回されてばかり。
かつて俺が誰かの言動にここまで悩んだことがあっただろうか。幼いころの初恋が、それは幻だったよとかき消されてしまうような。甘いだけだった初恋が嘘のように今はただただ苦しい想いを募らせている。

「あ、お、み、ね、」

だ、い、き。

無意識だった。数学の数式を書かなければいけないノートに、彼の名前を書いた。
幸い自分の部屋なので、俺のこんな気持ち悪い行動が誰に知れ渡る訳でもないのだけれど。我に返って消しゴムで消したその上から解かなければいけない問題の数式を書こうとするも、頭が働かない。
勉強が手につかないのはいつもの事だけれど青峰の事を考えると拍車をかけるように俺の頭の中は彼のことでいっぱいだった。

(らしくない、らしくない)

日に日に募る想いを、俺はあとどれだけ隠し通すことが出来るだろう。
彼に向ける笑顔の下にあとどれだけの「好き」を隠せるんだろうか。
なんらかの拍子でそれが漏れて、気づかれて、その時青峰はどんな顔をするんだろうか。俺も見たことのないような顔で俺を見るのだろうか。
いっそ消せたらいいのに。鉛筆で書いたような感情が消しゴムで消せたら楽なのに。こんな風に、消せたら。出会ったころの憧れに戻れたら、楽なのになぁ。

「楽だけど…今更そんなのどうしたらいいんスかぁ…」

この恋が実ることはあるのだろうか。側にいるのに一番可能性が遠い気がして憂鬱だ。それでも明日また会えることを想像したら嬉しさで頬が緩むのだから、恋ってややこしい。




160609



(恋ってややこしい…)









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