俺の中には生まれつき5人の人間が住んでいる。それは俺を含めて6人の人間だ。

月曜日、俺達の中で一番頭の良い人格の赤司っちが難しい本を読みながら学校に登校する。赤司っちからは本を読む事を度々勧められるが俺は活字が嫌い。難しい言葉も好きじゃない。そういうと赤司っちは「涼太はもう少し勉強した方がいいよ」と良いながら先生よりも分かりやすく数学の宿題を教えてくれる。俺は赤司っちのことを凄く頼りにしている。

火曜日、この日の朝は必ず体育がある。俺達の中で一番運動神経の良い青峰っちが朝ご飯を沢山食べてからお気に入りのバッシュを履いて登校する。運動も出来て、中でもバスケが得意な青峰っちはいつでも皆の人気者だ。俺も運動神経は割と良い方なので「黄瀬、お前もバスケしてみろよ」と、言って青峰っちは俺を誘ってくれた。俺は青峰っちにバスケを教えてもらう時間が好きだ。

水曜日、この日は学校へは行かない。一番寝坊助な紫原っちが起きないからだ。水曜日の授業は午前中だけなのでいつも昼間に起きる紫原っちは家でごろごろしているか、寝ている。俺が、引きこもらずに外に出たらどうっスか?、と言うと「じゃあお菓子買いに行く」と行って近所の駄菓子屋に行く。すっかり顔馴染みのおばちゃんに30円を渡してスティック菓子を買うと「最近チャーシューラーメン味にハマってる」と言って俺に半分分けてくれる。チャーシュー麺ってこんな味だったっけ?と思いながらも紫原っちと食べるそれはとても美味しいので俺は紫原っちのお陰で好きなお菓子の種類に詳しくなった。

木曜日、一週間も半ば。一番だるくてみんな顔を見せたがらない中、真面目に早起きをして登校してくれるのは緑間っち。早起きする理由は彼お気に入りの占いを見る為だ。今日のラッキーアイテムはイグアナ(縫いぐるみでも可)らしくそんなもの用意出来る人はいるのかとツッコむといつの間にか緑間っちの左手にはイグアナの縫いぐるみがあった。そんなもの良く持ってるっスねぇ…と言うと「当たり前だ。俺はいつだって準備は怠らない」とやけにドヤ顔で言うもんだから俺は笑いを堪えてイグアナのぬいぐるみを持つ緑間っちに髪の毛の色と似ているねと返した。俺は緑間っちの影響で占いというものに敏感に反応するようになった。

金曜日、俺の中でも一番おとなしい黒子っちが一週間の締めくくりに出てきてくれる。黒子っちの一日は至ってシンプルで俺のつっこむような要素は何一つないんだけれどそんな彼の楽しみは放課後のファーストフード店で飲むバニラシェイクだ。俺はバニラ味よりもチョコレートが好きなんだけど黒子っちは飽きずに毎回バニラシェイクを頼んだ。一番おとなしい彼は一番こだわりが強い。そんな黒子っちに俺は悩み事があるといつも相談をしていた。そうすると「黄瀬くんなら大丈夫です。僕たちがついてますから」と、黒子っちは言ってくれるので俺は安心して眠れるのだ。

休日になると俺、黄瀬涼太はある所に通う。
そこは大きな建物。
俺の中には生まれつき5人の人間が住んでいる。誰かはそれを病気だと言って悲しんだ。そして色んな医者、薬、療法を俺に試したけれど俺にはそれが苦痛で仕方がなかった。俺にはこの5人がいないと生きていけない。5人と過ごす時間が一番好きで大事なのに周りはそれを良しとしなくて俺の中の俺達を切り離そうとする。
「やめて。やめて。俺から皆を奪わないで」
俺は俺を奪おうとする大人が大嫌いだった。

そうして「今回も人格統合に失敗しました」と言ってカルテを書いている医者は「ゆっくり頑張ろうね。」と俺に優しく微笑みかけるから俺はそいつの顔面に唾を吐いてやった。「お前が死ね」と吐き捨てて。

そしてまた月曜日が巡る。
俺は俺の中の人格が入れ替わる瞬間が分かる。優しい彼らに甘えて、俺は長い眠りにつく。


130922

生まれつきって書いてるけど黄瀬が過去何らかのトラウマがあって自分をまもるために赤司→青峰→の順番で人格形成されていったようなお話し
この後主人格の黄瀬の身体(人格)を奪おうと黄瀬以外のキセキ内で争いが起こったりする










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