黄瀬は俺を信じられないという。俺が好きだという度に嬉しそうな顔をして笑う癖に何時間後には「本当に俺が好きなのか」「俺のどこが好きなのか」「それはいつまで好きでいてくれるのか」と言って俺を困らせた。
俺は黄瀬が好きだ。なのに黄瀬はそれが信じられず不安で不安で仕方ないと言って泣く。そんな黄瀬の不安がなくなればいいと俺は信じてくれるまで「好き」だと言い続けたし数センチ低い身体を抱きしめることで安心させてきた。はじめは信じてもらえなくてもそうし続けることで黄瀬も俺に対する不安がなくなるだろうと思っていた。しかしついに黄瀬は「俺もう駄目だ…青峰っちとやってける自信ない…っ、別れよ、別れてお願い。俺みたいな男より青峰っちにはもっと純粋で可愛い女の子が似合うっスよ…」と言い出した。なんなんだそれは。こいつは今まで俺の何を見て来たんだ。俺のどんな言葉も態度も黄瀬には伝わらない。伝わっていなかった。俺は虚しさと無力感にどうしようもななっくて、今まで2人過ごしてきた日々をたった一言「別れよう」なんて言葉で全部なかったことにしようとする黄瀬に怒りとか苛立ち、寂しさと悲しさがごちゃごちゃになってこみ上げた。「俺がお前を好きってだけじゃ駄目なのかよ」と言って黄瀬を抱きしめようとしたのにその腕すら振り払われる始末。俺は黄瀬の不安をいつものように受け止めきれず初めて目尻が熱くなったのを覚えてる。
泣きそうになった。こいつは確かに「別れよう」と言ったのだ。今までのどんな言葉よりムカついたし、悲しかった。
そして上手く呼吸が出来ないと思ったら俺は知らず知らずに泣いていた。
「青峰っ…ち…?」
俺が泣いている事に気付いた黄瀬は驚いた顔をして此方をみている、気配だけはする(黄瀬の顔が見えないから分からない)
俺は情けない泣き顔を見られたくなくて手の平で目尻を隠した。それでも指の隙間からは涙が滲んだ。
「青峰っち、」
「頼むからさぁ、」
別れるなんて言うなよ。なんでだよ。こんなに好きなのに。どうして分かってくれないのか。どうして伝わらないのか。俺はどうしたらいいんだよ。
「青峰っち…、ごめ…俺…ごめんね…酷い事言って、ごめん…っ」
そう言って黄瀬は俺の頭を抱く。
黄瀬には沢山の不安があるらしい。俺が女に行かないか。俺が黄瀬を好きかどうか。これからも、ずっと一緒に居てくれるのか。どうしたらその不安がなくなるのか。もしかしたら一生なくならないのかもしれないと黄瀬は言うけれどほんの少しくらい、俺の事を信用してくれてもいいんじゃないかと思う。簡単に別れようなんて言ってしまうお前が俺は怖いよ。



130905


時々ヒステリー女子になる黄瀬をいつも男前に受け止めてきた青峰だったけど「別れよう」って言われた瞬間にとてもとても悲しくなった、お話。(笑)青峰って滅多に泣かないけど唯一泣くとしたら黄瀬にそう言われた時かなぁと思う。


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