青黄


20160429:黄瀬

4月も終わり、咲いていた桜はいつの間にか散っていた。
短い髪に桜の花びらをつけたままそれにすら気付かずにボールを地面に叩きつけて走る青峰の姿をぼんやりと思い出す。どんなに早く走ってても青峰にくっついたままの桜を見て羨ましいなーなんて思っていた春がもう終わった。
あの桜は、もうなくなってしまっただろうか。



20150731:黄瀬

もしも青峰が俺だけに笑ってくれたなら。もしも青峰が手を繋いでくれたなら。もしも青峰が抱きしめてくれたなら。もしも青峰がキスをしてくれたなら。もしも青峰が俺を、。

そんな例え話、目が覚めて全て本当になったなら。俺は死んでもいいなんて本気で思う。



20150724:黄瀬

叶わない知りながらどうして人は恋をするんだろう。
俺もどうして青峰を好きになったりなんかしたんだろう。青峰を好きにならなければこんな辛い想いをすることもなかったし寂しくて泣いたりなんかしなかったと思う。



20140826:青峰

黄瀬は時々何かを言いたそうな顔をして俺のことを見た。
それが何かは分からないけどとても大事な事のような気がする。「なに?」と尋ねると「なんでもない」と笑うから、俺には言えない事なのかとイライラして、少しだけ虚しい気持ちになった。


20140826:黄瀬

軽々しく好きだなんて言えない。
俺にはそんな勇気がない。


20140418:黄瀬
感情を誤魔化すのが上手ではない。俺も青峰も。だからちょっとした事でぶつかって喧嘩して別れた事もあった。その度に「もう駄目かもしれない」って泣いた事もあったけどそれでも青峰を嫌いになれないのは、青峰が一度だって俺に「嫌い」だって言わないから。泣いてる俺を、いつだって迎えに来てくれるから。伸ばした手を、握り返してくれるから。


20131103:青峰

明日は月曜日で朝練もあるし遅刻したら駄目だから我慢してやってるのに「分かってるフリで焦らさないで、」って黄瀬が泣きながら言うから俺は結局黄瀬を抱き締めるしかなかった。

けどその身体に触れた瞬間とても愛しさがこみ上げて、結局俺も黄瀬を抱きしめたかったんだと思い知らされた。


20130818:青峰

バスケと黄瀬は俺のモノ。



20130806:黄瀬

青峰が好きだ。手が、温もりが、匂いが、言葉が、全てで俺を愛してくれていると分かるその腕を俺はずっと忘れられないんだろう。



20130522:青峰

俺は沢山の事を抱えて生きて行けるほど器用な人間じゃない。
仮に抱えきれたとしても思わぬ拍子で此の手から落ちた一つが黄瀬であることを想像したら少し怖くなった。



20130425:黄瀬

青峰に触れられない手ならいらないと思った。青峰の声が聞こえない耳なんていらない、青峰が見えない目なんて潰れてしまえばいい。
青峰に伝わらないならこの愛だっていらないと思った。



20130422:青峰

記憶なんて曖昧だし。昨日の晩御飯がハンバーグだったことも明後日にはきっと忘れてる。いつからバスケを始めたなんてことも覚えていない。今日受けた授業の内容……は、単に初めから頭にはないけど。
でも何でか、黄瀬が初めて俺を好きだって言ってくれたときの声とか顔とか、何だったらその背景とか空気感とかは全部覚えてんだよ。
何年か経った今でも。
俺はそれを一生忘れないんだと思う。



20130408:黄瀬

「大好きな君がいるだけで、僕は強くなれるよ、」そんな流行りの歌を聞いたとき、俺にはまだ恋人も好きな人すらいなかった。だから「好きな人がいると強くなれるんだなぁ」と思っていた。
しかし実際は逆だった。
青峰と出会い、青峰を好きになってから俺は弱くて臆病で、そして何より卑怯な人間になった。

授業が終わり、部活に行く前の話だ。「これを青峰くんに渡して欲しい」と顔を紅くしながらクラスメイトの女の子は俺にラブレターを寄越した。
「分かった、任せて」と俺は笑顔で手紙を受け取った。
それを数分後、ゴミ箱に捨てた。

ある夜の電話。
「青峰くんが好きなの、彼、どんなタイプが好きなのかなぁ…」と相談を受けた日。「…残念だなぁ。俺ね、君のこと気になってたけど、青峰っちが好きなんだね…」と思わせぶりな態度を取り、目一杯俺に気を引かせた。数日後「黄瀬くんが好き」と言わせると「お前なんか興味ねェよ」って振ってやった。

青峰はそんな俺を知らない。
知らなくていいと思う。

「俺はこれからもきっと、青峰を繋ぎ止めるためなら平気で嘘をつくと思う。」



20130303:黄瀬

何センチでもいい。青峰に近づきたい。この距離を縮める為に伸ばした手を、振り払わずにいてくれた彼の笑顔がまぶし過ぎて、俺はうつむいて、泣いたんだ。


20130216:青峰
この世界の何にでも手にしているようヤツが、俺を欲しいと言う。俺が欲しいと言って泣くのだ。
俺が少し触れるだけで幸せそうに笑う黄瀬の顔がとても可愛いと思った。そしてその顔を一番近くで見ていたいと思った。俺だけに見せるその顔が、俺はとても愛しいと思う。


20130216:黄瀬
誰かと居るだけでこんなにも満たされる思いをするのは初めてだった。
俺は世界で一番、何からも愛されている彼を手に入れた。
朝、目が覚めた時隣に青峰が居る。
それだけでいい。もうそれだけで幸せだ。彼が笑ってくれる。俺だけに笑う。誰にも渡さない。
俺だけの、ヒト。


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