15


ヒソカから逃れたあと、一人になるのは心細く、クラピカ・レオリオと行動を共にした。レオリオのターゲットは246番のポンズ。誰の番号なのかよくわかったね、と言うと、情報通のトンパから聞き出したと彼は言った。

「もしかしてトンパなら、53番が誰か分かるかな?」
「その可能性は高いな」

そうしてトンパから53番がポックルという少年だと聞き出したは良いものの、彼がどこにいるのかは全くわからない。ポンズも同じくだ。私たちは完全に行き詰まっていた。





四次試験が開始されてから、あっという間に丸6日が経った。試験終了まで、とうとうあと一日。
ヒソカ以降、私たちが他の受験生と出くわすことはなく、ポンズとポックルの行方も分からず。気ばかりが焦り、身体の疲れと共に精神的な疲労は隠すことができなかった。
ゴンと合流したのはそんな時だった。彼はもう6点分のプレートを集めたらしい。

「ねえゴン、53番のポックルっていう人わかる? こんな見た目らしいんだけど」

駄目で元々のつもりで、トンパから聞き取った特徴を地面に描きだした。木の枝でガリガリと似顔絵を描くと、ゴンは意外にも心当たりがあったようで、「あ」と目を瞬いた。

「オレ、初日に見たよ。矢に毒を塗ってたから、匂いをたどれるかも」
「ホント!?」

思ってもみなかった朗報に、パァっと顔が綻ぶ。ゴンはポックルとポンズ、両者の薬品の匂いをたどってくれることになった。
すばらしい嗅覚を持つゴンが辺りを見回しながら進んでいくのを、私たちは三人で追いかけた。

「ゴン、ごめんね。二人分の匂いをたどるなんて、大変なのに」
「ううん、いいんだ。そのために来たんだから」

頼ってしまっていることを謝ると、ゴンはこちらを振り返らずにそう言った。その声がなんだか彼らしくなく、少し暗い気がして気になったが、ここで聞くのも野暮だと口にはしなかった。それに、今はとにかく時間がない。


ゴンが初めに見つけたのは、ポックルだった。私たち四人が落ち合った場所とそう遠くない茂みに身を潜めている。
木の上からそれを確認し、ゴンに向かって頷いた。確かに、トンパが言っていた特徴と一致する。

「オッケー。ゴン、ありがとう。あとは自分でなんとかするから、ポンズを追って」
「でも……」
「急がないと! 時間がないよ」

私一人を残すことを、三人は躊躇していた。戦闘力が全くないことを知っているから、余計だろう。
だがグズグズしているとポンズを見つける時間がなくなってしまう。私が急かすと、難しい顔をしていたゴンが、何かに気が付いたように視線を上げた。

「!」
「? どうしたの?」
「……いや、分かった。ここは任せるよ。オレたちはポンズを追おう」

急に納得してくれたことに拍子抜けする。レオリオとクラピカは食い下がったが、ゴンが引っ張るようにしてその場を去っていった。
しばらくポカンと口を開けて見送っていたが、自分にだって時間がないことを思い出し、ターゲットへと視線を戻す。
見つけたのは良いが……肝心なのは、どうやってプレートを奪うか、だ。
ポックルは辺りを慎重に見回しながら、草の間に身を潜めている。

相手は弓矢を使うのだから、距離を取って戦うのは不利だ。こっちには飛び道具なんてない。そこまでは何となく想像ついたが、戦闘の経験がそもそもないのだから、良い戦略なんて浮かびっこない。
じりじりと時間が流れていくことに気が急き、私は無謀にもノープランで彼に飛びかかった。

「うりゃあああ!!」
「うわっ!?」

思い切り木を蹴り、ポックルに向かって突進する。彼はそれをギリギリで避けると、戦闘態勢を取ろうと背中の矢筒に手を伸ばした。それを見て、私は腕目がけて蹴りを入れる。

「くっ!」

足でポックルの腕をはじくと、マウントを取ろうと飛びかかる。彼は急いで体勢を立て直すと後ろに走り出した。捉え損なった私は無様な姿勢で地面に両手をつく。
その間に、ポックルは弓矢を手にしていた。

「!(やばい!)」

体勢を整えられないまま後ずさる。地面を蹴ると距離を開けることには成功したが、動転しているからか着地がうまくいかず、足がもつれて転んでしまう。その隙を逃すわけもなく、弓から矢が放たれた。
終わった! そう覚悟し目を瞑った途端、身体がフワリと浮いた。背中に温もりを感じ、抱えられていることに気付いた時には、それが誰かなんて分かっていた。

「……キルア、」

どうしてこんなに、助けてくれるの。

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