一次試験は、試験官のサトツに付いていく事。凄まじい速度で歩くサトツの後を、四百五名の受験者が追う。
ハンター試験ってこんな感じなんだ。普通にマラソンっぽいな。二次試験以降もこういうのなのかな?
マラソンが続くなら、荷物を軽くしておきたい。私はトンパからもらったジュースを取り出し、ゴミ箱なんてないよなあと周囲を見回した。

「それ、飲まないほうがいいよ!」

ふと斜め前から声が掛かる。そちらを見やると、先ほどジュースを吐き出していた少年が走りながらも振り返り、私の手に握られたジュースに目を向けていた。

「オレ変な味とか分かるんだけど、それ古くなってた!」
「あ、大丈夫。さっき君がそう言ってたから、捨てようと思って」

見ず知らずの私に忠告してくれるなんて親切だなあ。なんていうか、普通に少年っぽい。
少年が私に声を掛けたからか、両脇を走る二人も私を振り返る。よく見れば金髪の人も、私とそう変わらない年齢に見える。
捨てられそうにない缶ジュースを、結局ポケットにしまいこんだ時、体の右側に風が吹いて髪が踊った。ふわふわとした銀髪が視界をよぎる。これまた年下だろう少年が、スケボーに乗って私たちを追い越したのだ。
うわー、いいなースケボー。私も持ってきたら良かった。
羨ましがっているのが伝わったのか、銀髪の少年は一瞬こちらを見たが、興味が無さそうにすぐ逸らされてしまった。彼の興味はゴンと呼ばれた少年に注がれている。

ゴンにキルアにレオリオ。特に盗み聞きするつもりはないが、皆が黙々と走る中大声で交わされる自己紹介は嫌でも耳に入った。あれ、そういえば金髪の子がいないな。
どこに行ったんだろうと周囲を伺うと、ゴンがこっちを見ていることに気が付いた。

「?」
「君の名前は?」

あ、何気に私も自己紹介の一員だったんだ。

「ナマエだよ。よろしく」

私が名乗ると、キルアと呼ばれた少年が、銀髪を揺らして振り向いた。
不躾なほどまじまじと見られ、首を傾げながら、「はじめまして」と挨拶した。ゴンは「よろしく!」と明るい声で答えた。

「ナマエって、珍しい名前だねー」
「そう、かな?」
「ナマエはどこから来たの?」

無垢な質問にウッと言葉が詰まる。聞かれたって答えられっこない、私だって知りたい。
困って毛先を指に絡ませる私を、キルアは未だに見つめ続けていた。

「……実は、わかんないの」
迷った末に、正直に言うことにした。
「わかんないって?」
レオリオという人が怪訝な顔をして問いかける。
「記憶喪失なんだよねー、私」

わざとケロリと答えてみせると、ゴンとレオリオは目を丸くした。
キルアはもう私を見ていなかった。

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