1971年

この前図書館からどっさり借りた本を読もうと、この日は校内を散策していた。
読書にぴったりな場所を探すうちに、湖の近くに辿り着いた。
ここで読書をしたら気持ち良いだろう。ひと気もなく、集中するのにピッタリだ。
寄りかかれそうな木の影を探すうち、見た顔と出会った。

「セブルス?」
「…ナマエ?」

木の影には、スリザリンカラーのネクタイを結んだセブルスがいた。
ナマエと同じように読書をしにきたらしく、その手には難しそうな本が握られていた。
ナマエはニッコリ笑ってその隣に腰掛けた。

「久しぶりね!」
「…言うほどでもない」
「そう?」

汽車の中で出会って以来、顔を合わせることはなかったのだから、ナマエにとっては久しぶりだった。
グリフィンドールとスリザリンに寮が分かれてしまい、あまり関わりがないのだ。
セブルスはちらりとナマエの顔を見ると、迷ったように口を開いたり閉じたりした。

「なあに?」
「…リリーは、元気か」
「うん!リリーってね、魔法も上手だし勉強もできるから、フリットウィック先生とスラグホーン先生からしょっちゅう褒められてるの」

ナマエが言うと、セブルスはそうか、とポツリと相槌を打ったが、その顔にはわずかに笑みが浮かんでいるように見えた。
その横顔を見ていると、なんだかこっちまで嬉しくなった。

「セブルスは?スリザリンでどんな感じ?リリーがうまくやれてるか心配してたよ」
「…別に」

なんの他意もなく問いかけた言葉に、セブルスはフイと顔を背けた。
セブルスがスリザリン寮で浮いていることや、常に一人でいることなど知りもしないナマエは、首を傾げる。
セブルスは、相変わらず目を合わせぬまま、小さな声で言った。

「…一人、良くしてくれる先輩がいる」
「へぇ、良い人?」
「……さあな」

どんな先輩なのか尋ねようとしたのに、セブルスは立ち上がり服を整えると、「僕はこれで」と呟き去って行ってしまった。
ナマエはその後ろ姿を、きょとんとしたまま見送った。





1991年

最近非常に気になることがある。ナマエの視線は、いまも“それ”に注がれていた。
食器がぶつかり合うカチャカチャという音と、生徒たちの止まらないお喋りで賑わう大広間の中で、“それ”はふいに始まった。

(もめてる、よなあ)

視線の先はグリフィンドールのテーブルだ。そこにはハリーとロン、そしてスリザリンの男子生徒が三人いた。
どう見ても楽しくお話しているようには思えない。
あのスリザリンの生徒は、今朝もネビルの思い出し玉を引ったくり揉め事を起こそうとしていた男子だ。

見たところスリザリン生が喧嘩をふっかけているように見えるが、ハリーとロンも好戦的な態度に見える。
グリフィンドールとスリザリンが犬猿の仲だということは身をもって知っているがーーーナマエはなんとなく、隣に座るスネイプを見た。

「…なにかね」
「…べつに?」

視線に気付いたスネイプは、煩わしそうに振り向いた。
ハリーの外見でスリザリン生と揉めると、どうしても連想してしまうんだよなあ…。

「あ、そういえば、セブルス?」

公の場でセブルス、と呼ぶと嫌がることを知っていて、わざとファーストネームで問い掛ける。
明らかに眉間の皺が増えたが、訂正はせず続けた。

「なんだか生徒に陰湿ないじめをされているようで」
「…なんのことかね」
「いやあ、ちょっと小耳に挟んだもので」

この前のハグリッド小屋訪問時、ハリーとロンに初授業がどれほど酷かったのかを熱弁されたのだ。なんにも悪くないのに落ち込むハリーの姿を目の当たりにしては、この男に何も言わずにはいられない。
じと目で見つめれば、スネイプはフンと鼻を鳴らし顔を背けた。

「我輩は教師として指導しただけだ」
「どっこが…、あのねぇ、ハリーはハリーなのよ?何の罪もないんだからね、復讐する相手間違ってるわよ」
「では、我輩はこれで」

話が周りに聞こえぬよう、顔を寄せて小声で話すと、スネイプは口元を拭い引き止める間もなく去って行った。
駄目だ、これは…。
溜め息をつき視線を前に戻すと、既にハリーやロンの近くから三人組は居なくなっていた。

ふ、と視界に映った、ウィーズリーの双子と目が合う。
なんだか大袈裟に驚いた表情を見せたあと、ニヤニヤしながら天を仰いだり肩を落としたりしている。
眉を寄せると、その口元が声を出さずに動いた。

(ま、さ、か、す、ね、い、ぷ、が
こ、い、び、と、だ、な、ん、て………はぁ!?)

呆れて物も言えない。手を払い、そんなことあるわけないでしょ、とジェスチャーで伝えると、双子のニヤニヤ顔は再び告げた。

(せ、ぶ、る、す)

…ああ、公の場でファーストネームを嫌がった理由には、これも含まれているのかもしれない。
地獄耳の双子をギロリと睨んだ。


ーーーその夜、興奮気味のマクゴナガル教授に、ハリーのクイディッチ特別措置について聞かされ、共に手を合わせて喜ぶこととなった。

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