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左手でシャープペンシルをくるくると回しながら、どうしようかな、と考える。教科書を開きノートも広げているが、わたしはまったく勉強する気にはなれずにいた。だって、バレンタインが近い。

「ねえ、狗巻くん。狗巻くんには何をあげたらいいかなあ」
「……こんぶ」

本人に聞くことじゃない、という顔をされた。真面目だね、と言うと、しゃけ、と返される。

「おにぎりじゃ、格好がつかないでしょう」
「おかか」
「……だって、おにぎりにときめく?」

すると狗巻くんは押し黙った。自分が狗巻くんにおにぎりを渡すところを想像して、やっぱりないな、と思う。わたしはーーそしておそらく狗巻くんもーーおにぎりが好きだが、だからといって白いお米が甘酸っぱい青春と結びつくかというと、それは無いのだ。
わたしは回していたシャープペンシルを鼻のしたに乗せる。折衷案としておにぎり形のチョコレートに思いを馳せていたところで、シャープペンシルが取り上げられた。

「俺はさえこが好きだから、どっちでもいいよ」

こういうときだけ喋るのはずるいとおもう、と言うと、狗巻くんはうれしそうに、おかか、と返事をした。