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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -






ーーバレンタインのチョコレートです、よかったら食べてください。

とても簡単な一言だが、わたしの好きなひとは、この一言が世界で一番言いにくい相手だと思う。

「どうしようかな、これ」

それでも律儀に用意してしまったチョコレートを手の中で弄ぶ。なぜ宿儺なのだ、と聞かれれば、わからない、と答えるしかない。成り行きで助けられて、だから好きになった。ほんとうのところはそうだったが、言葉にするとすこし違うような気がした。

「女、そうしかめっ面をしていても物事は進まんぞ」

意地悪そうににんまりとした顔が視界に飛び込んできた。わたしは文字通り、飛び上がるようにして驚く。そのようすをみて彼は声をあげて笑った。

「それを、俺に渡したいのだろう?」
「どうして、それを」
「あんなに熱烈な視線に、気付かないほうがおかしい」

宿儺は頬杖をついてわたしをみつめた。恥ずかしさで頬が赤くなってゆくのが分かる。

「どうした?渡さないのか」

わたしは俯き加減で、受け取ってください、と小声でチョコレートを差し出す。そして、簡単だと侮っていた一言がこんなに難しかったなんて、と思う。

「ああ、受け取ってやろう」