×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
五条

2020/08/21 15:41

以前までは、どちらかといえばふっくらしている方だった。うるせえデブ、と言うと、ふふふ、と彼女は笑っていた。
ーー幸せそうだなあ、羨ましいなあ。
彼女と、彼女の夫を眺めながらそんなことを思っていた。彼女がおれの母親だったらよかったのに。きいきいと陰で喚くだけの、おれを産み落とした生き物を頭の中で考えて、そしてやめた。

彼女は世話係として夫婦でおれの傍にいた。柔らかい雰囲気の二人で、すごく気に入っていた。
おれはうっとおしいくらいに彼女と彼女の夫のあとをついてまわっていた。

おれが十五になる年に彼女はしんだ。夫から三年遅れてのことだ。彼女は自分で首をくくった。
後を追いたいと何度も泣いていたらしいことを全部がすんでから知った。三年生きた理由は、おれが寂しくないように、五条の家を出るまで傍にいたかったからだという。




前へ | 次へ