俺はその時後悔をした。
佐久間のケータイ
いつものように練習を終え、自宅へと帰る帰り道。
いつもは鬼道も一緒だが、用事があると言って先に帰ってしまったため、今は佐久間と二人で帰っている。
俺は佐久間が幸せそうにケータイをいじっているのが見えたので、気になってディスプレイを覗いてみた。
「な…っ!」
俺は目を疑った。
ディスプレイには鬼道の写真がズラリと並んでいたからだ。
「あ、てめ源田!勝手に見るな!!」
バッとケータイを隠した佐久間は警戒心をむき出しにしてこちらを睨み付けていた。
「…そのケータイの写真、どうしたんだ?」
「これか?俺が撮ったんだ」
さらっと言ったが、俺が見えたやつの中には着替えや入浴中のものまであった。
「…どうやって撮ったんだ?」
「そんなの、追いかけ回して撮ったに決まっているだろう」
「…………」
俺は今まで佐久間は鬼道のことを尊敬の対象として見ているのだろうと思っていた。でも違ったらしい。
どうやら佐久間は鬼道のストーカーをしているようだ。
この時点で佐久間に対する俺のイメージは変態になった。
「あぁ鬼道さんかっこいい素晴らしい抱き締めたい犯した「それ以上言うなアアァ!!!!」」
住宅街であるにも関わらず大声で叫んでしまった。
ちょっと待て、今こいつ危ないこと言わなかったか!?
「お前ホントに佐久間か!?俺の知ってる佐久間はこんなんじゃない!!」
「失礼だな!!正真正銘佐久間次郎はこの俺だ!!」
ついに頭がおかしくなったか!?と言われたが、それはお前にそのまま返したい言葉だ。
俺は軽蔑の眼差しで佐久間を見ていたが、それには気付かずに急に熱弁を始めた。
「鬼道さんは俺が今まで会った人の中で一番素晴らしい!サッカーのあの指導力と技術!そしてあの真剣な眼差し!どれをとっても素晴らしいのに一切妥協を許さないその心!サッカーへの情熱が感じられて感動の一言に尽きる!さらにそれだけじゃなく、プレイ中のお姿もかっこいい!しなやかに動く身体!そして腰つき!欲情させ「いい加減黙れエエェ!!!!」ガッ!!」
イライラが頂点に達し、黙らせるために頭を殴った。が、佐久間はそのまま気絶してしまった。
結局俺が佐久間を家まで運んだのだが、彼は翌日その時のことを覚えていないと言った。
なんかムカついたから、もう一発殴っておいた。
2010.06.21