「撮影会を始めます!」
「…説明を求めてもいいか?」
ファンサービスもほどほどにver.海外組
「急に俺達を呼び出して、何かと思えば…」
「撮影会ってどういうことなんだい?フィディオ!」
とある部屋に、FFIで戦った各国の代表者達が集められていた。集めたのはイタリア代表の白い流星、フィディオで、何の説明も無く集められた代表者達は、不満も露に、フィディオに説明を求めた。
「…えーと、実は…」
少し口籠もりながら一枚の紙を取り出したフィディオは、皆に見えるように、その紙を掲げた。その紙には、何か文字が連ねてあった。
「…手紙?」
「今朝、ポストを見たらこの手紙が入ってたんだ。差出人はマモル。手紙の内容は…」
途中で言葉を切ると、手紙を読み始めた。
「『フィディオへ。今日、フィディオにやってほしいことがあるんだ!この間俺達イナズマジャパンは抱き枕の写真を撮ったんだけど、それをフィディオ達にもやってほしいんだ!だから、機材はこっちで揃えるから、指定した場所に皆を集めてくれないか?じゃあ、よろしく! 守』…というわけなんだ」
「イナズマジャパンが写真を撮ったというのは聞いたが…」
「ミー達もやるんだねマーク!」
「そうだな」
「しかし、このメンバーか…」
この部屋に集められたメンバーは、フィディオ、エドガー、ディラン、マーク、一之瀬、アフロディだった。
「…一人知らない奴がいるんだが」
「この僕を知らないのかい?無知にも程があるよ」
「仕方ないだろ?君たち韓国チームは円堂達に負けて、ライオコット島に来てなかったんだからさ!」
「一之瀬君、人の傷を抉るようなことを言わないでくれるかい?結構気にしてるんだよ!」
「やーいアフロディ涙目ー」
「…一之瀬ってあんな性格だったか?」
「そんなことより早くミー達もやろうよ!」
一人いつもと変わらないテンションのディランは、早くやろうと言って、楽しそうにしている。その一方で、アフロディはいじけて部屋の隅に蹲っている。一之瀬は何故か知らないが、満足そうな顔をしていた。
正に三者三様、十人十色といった感じだった。
「…えーと、じゃあ、始めようか」
フィディオが苦笑しながら開始の言葉を言うと、ディランはOK!と言ってさらにテンションを上げた。
フィディオは、撮影会が無事に終わることを祈った。
〈フィディオのターン〉
「俺から?」
「みたいだね。早くやっちゃおうよ!」
「それはいいんだけど…誰が撮るんだ?」
「僕達がやるよ」
そう言って部屋に入って来たのは、韓国チームの南雲晴矢と涼野風介だった。
「南雲君、涼野君!来てたのかい?」
「円堂にカメラマンやってくれって頼まれたんだ」
「この僕達に頼み事とは、いい度胸だよね」
二人の手には、円堂――正確には鬼道だが――から借りたカメラが握られていた。
「じゃ、早速撮るから…フィディオ、だっけ?早く寝転がれ」
「知らない人に言われるとムカつくのは何でだろうな…ま、いっか」
おとなしく寝転がって、ポーズをとるフィディオを、南雲が撮る。涼野は腕を組んで仁王立ちしていた。
フィディオの撮影が終わると、南雲はテープの調整をし、涼野は嫌味を言った。
「円堂の抱き枕は手に入らなかったのに自分はやる…残念だったな」
「…君、俺が気にしてることを言わないでくれるかい?ガラスの心に罅が入ったよ」
「貴様、私が読めない漢字を…!」
「日本人なのにこれが読めないの?…ぷっ」
「イタリア人のくせに…!」
「あ、イタリア馬鹿にしたな!?差別はいけないって習わなかったのかい?」
「素直に教えてあげなよ。涼野君、“罅”は“ヒビ”って読むんだよ」
「アフロディ、貴様…韓国人のくせに…!」
「せっかく教えてあげたのに!!しかも韓国馬鹿にしたね!?許さないよ涼野君!!」
「………なぁ、次、行っていいか?」
〈エドガーのターン〉
「手早く済ませてくれ」
「はいはい、っと」
南雲に手早く終わらせるように言ったエドガーは、すぐに寝転がった。そしてポーズをとったエドガーを南雲が撮る。
素早く終わらせた二人は次の人を撮る為に、すぐに準備を始める。が、その途中で乱入者が現れた。
「エドガー。監督がお呼びだ」
「ランス!ああ分かった。すぐ行く」
「誰だ?」
「ナイツオブクイーンのメンバーだよ」
ランスとともに行ってしまったエドガーを、突然のことに唖然としながら見つめる皆。最初に口を開いたのはマークだった。
「…次、行かないか?」
〈ディランのターン〉
「ミーを撮るんだね!楽しみだよマーク!」
「そうか」
「なんで彼はいちいち聞くんだい?」
「それはディランだからさ!」
「…答えになってないよ一ノ瀬君」
無駄にテンションの高いディランは、見ているだけで疲れるような感じがした。涼野が寝転がるよう指示すると、ディランはすぐに寝転がった。指示通りに動くディランを見ながら、マークはぽつりと呟いた。
「何故あいつの言うことには素直に従うんだ…?」
「…どういうことなんだい?」
「アフロディ…と言ったな。ディランは試合中は俺の指示通りに動いてくれるんだ。だが、それ以外では一人で突っ走っちゃって、俺の言うことを一切聞かないんだ」
「そういえばそうだね!」
「カズヤ、元気良く言わないでくれ」
皆が話している間に、撮影は終わったらしく、ディランが皆のところへ突進して来た。
後ろの方では南雲がカメラの準備をし、涼野は声をかけて来た。
「次やるから早くしろ」
〈マークのターン〉
「マークのセクシーなポーズが見られるんだねカズヤ!楽しみだよ!」
「ディラン、それ言葉のセクハラ」
一ノ瀬の冷静な突っ込みをスルーして、一人勝手に興奮するディランは、僅かに頬を紅潮させていた。指示通りてきぱき動くマークは、ディランの言葉を聞いて、恥ずかしさから顔を赤く染めた。
撮り終わった後、マークはディランに抱きつかれ、南雲は撮影した物を確認し、感嘆の声を漏らした。
「一番リアルに撮れてる…」
「本当だ。凄いな」
涼野まで褒めるくらいだから、とアフロディも画面を覗く。
「へぇ、凄いじゃないか。でも僕の美しさには適わな「お前は黙ってろ」酷い!」
「……ねぇ、次、行かないか?」
皆が騒ぐ中、フィディオの声は虚しく掻き消えていった。
〈一ノ瀬のターン〉
「よろしくバーン!」
「バーンじゃなくて南雲な」
訂正をしてから撮影を始める。未だにテンションの高いディランは、マークによって廊下へ追い出されたが、逆にもっとうるさくなったため、一緒に外へ行くことになった。よって、部屋に残っているメンバーは、一ノ瀬、アフロディ、南雲、涼野、フィディオだけとなった。
「ディランがいないだけでこんなに静かになるとはね…」
フィディオの声が部屋に響く。これだけで、ディランがどれだけうるさかったのかよく分かる。
撮影が終わった一ノ瀬は、もう大丈夫だろうと二人を呼びに行く。
また静かになった部屋で、南雲は言った。
「…撮るぞ、アフロディ」
〈アフロディのターン〉
「南雲君!僕を美しく撮らないとゴッドブレイクぶちこんじゃうからね!!」
「キモい。そしてウザイ。なにげに言ってることこえーし」
「君が最後なんだし、早く終わらせてしまおうよ」
「黙ってろイタリア野郎」
「酷ッ!ていうか君ってそんなキャラだったっけ!?」
「キャラ崩壊は常識だよ何言ってるのさこれだからイタリア野郎は」
「ノンブレス!?しかもまたイタリア馬鹿にされた!!差別は良くない!!」
「同じやり取りを繰り返すな!早く寝転がれアフロディ!!」
「やだ南雲ったら積極的!」
「ノーザンイ「すみません分かりましたもうふざけませんから必殺技は止めて!!」分かればいいのだ」
そんなやり取りの後、ようやく寝転がったアフロディを、南雲が撮る。
撮り終わった後、マークとディランを連れて一ノ瀬が帰って来た。ディランは何故か大人しく、顔が青ざめ、肩を震わせていた。対照的に、マークの表情はとても清々しかった。…何をしたのだろうか。
「フィディオ!もう終わった?」
「ああ、さっきね」
「じゃ、フィディオ。機材とかよろしくな」
「私達はもう帰る」
「了解。ありがとう。ちゃんとマモルに返しておくよ」
また今度、と言って解散した皆は、完成を楽しみにしていた。
機材を返しに行ったフィディオは、何故か傷だらけで宿舎へ帰って来たらしい。そして青ざめた顔で「マモルへの道のりはまだまだ先だ……」と呟き、青い物を見る度に逃げていたらしい。
「円堂に近づく輩はフルボッコな」
日本宿舎では、そう呟く人影があった。
後日。
再び集められた人達は、フィディオの言葉をまだかまだかと浮かれながら待っていた。
フィディオは皆を見渡してから、一枚の紙を掲げた。
「昨日ついに完成したという連絡が来ました!」
「「おおー!」」
「届けられた物は日本宿舎にあるから、今から行きます!」
ところ変わって日本宿舎。
そこでは円堂が待っていた。円堂は皆の姿を見つけると、満面の笑みで手を振った。
「フィディオー!待ってたぜ!」
「マモル!完成した物はどこだい?」
「こっちだ!」
皆は円堂に大人しく着いていき、着いた部屋には大きな段ボールがいくつもあった。
率先して行ったのはディランで、素早く、でも綺麗にガムテープを剥がすと、中身を取り出した。
「オー!ミー達綺麗に印刷されてるよ!!」
「本当に綺麗だな。細部まで美しく見える」
できばえの良さに感嘆していると、円堂がフィディオを呼び出した。フィディオは円堂に呼ばれたことが嬉しくて、気持ち悪いくらいニコニコしながら寄って行った。まるでどこかの某ビッチみたいだ。
何だ何だと皆はそちらの方を見て、こっそり聞き耳を立てる。
「撮影に協力してくれてありがとなフィディオ!」
「マモルのお願いだったからね。力になれて嬉しいよ」
「お礼なんだけどさ、フィディオが俺の抱き枕欲しがってるって聞いたから、作ってもらったんだ!!」
そう言って、他の物より小さい段ボール箱を取り出すと、フィディオに渡した。
「もし良かったらでいいんだけどさ…」
「マモル…!!ありがとう!!」
感激のあまり円堂に抱きつくフィディオ。円堂は、それを笑顔で受け入れた。
「え、何あれ。フィ円?フィ円なの?」
「どうでもいいから他のも見ようよ!!」
「空気読んでディラン!」
「あれ、お礼ってフィディオだけ?」
「さぁ?」
結局皆も違う物ではあるけれど、お礼を貰いました。
2010.08.28