小さな幸せ
「神無」
「何?」
「神無」
「…どうした?」
「神無神無神無神無神無神無神無…」
「だから何だよ!言いたいことがあるなら…」
名前を何回も呼ばれ、返事をしているというのに更に呼び続けられる。流石に苛ついて神威の方を振り向く。が、振り向く前に太股に感じた重みに一体何だと下を向く。
「…何やってんの」
「何って、膝枕」
「それは見りゃ分かる。何故かって訊いてんの」
「んー…なんとなく?」
「…はぁ」
いつもながら、神威の突然の行動には着いていけない。本人さえも理解してないことを他人の俺が理解出来るはずもなく、出てきたのはため息だった。
伸ばしていた足に乗せられた神威の頭は、安定した場所を求めてもぞもぞと動いた。漸く安定したのか、落ち着いた神威は俺を見上げていつもの笑みを浮かべた。
「暫くそのまま動かないでね」
「はいはい分かりました」
やれやれ、と言わんばかりに投げ遣りな返事をすると、はいは一回とまともなこと言われた。
後ろに手を付き、一度天井を見上げてから巨大な窓の外を眺める。今日も相変わらず綺麗な眺めだ。宇宙は偉大だなー、などと現実逃避じみたことを考えていると、下から微かな寝息が聞こえてきた。見下ろして、思わず微笑んでしまった。
「幸せそうな寝顔」
穏やかに微笑む様は普段の神威からは想像もつかないほど、幸せに満ちていた。良いもの見れた、と上機嫌になって頬にかかった髪の毛を払ってやる。僅かに身動ぎ、起こしてしまったかと焦ったけど、またすぐ穏やかな寝息が聞こえてきた。
「普段からこういった表情してればいいのに…」
それはそれで逆に気持ち悪いか?と思い直し、難しいものだと苦笑した。
「…おやすみ、神威」
小さな幸せ
(神威早く起きてっ!足が…痺れ…っ!)
2012.1.17